日本語要旨

沖縄トラフ南部、リフティング初期段階での広域的な正断層活動と低い地殻熱流量

沖縄トラフ南部は、海洋性玄武岩が海洋底までに完全に露出するような海洋底拡大が開始する前の背弧リフティングの初期段階を研究する上で重要な地域である。本研究では、マルチチャンネル反射法地震波探査、地形探査、地殻熱流量測定、および地磁気観測などを用いて、八重山海底地溝と与那国海底地溝を調査した。

反射法地震波探査で示された断面から、両海底地溝において、海底面に達する正断層が広範囲に分布し、トラフ中軸部にはトラフを埋積する厚い堆積層が存在することが明らかになった。八重山海底地溝では、リフト軸直下に局所的な音響的な透明体が認められ、浅部の貫入岩体を示している可能性がある。しかし、その成因を確認するためには、より高分解能の反射法地震波探査データ、あるいは追加の地球物理学的制約が必要である。

地殻熱流量は、局所的な異常が1か所認められることを除けば、全体的に低い値(40~63 mW/m²)を示し、沖縄トラフ南部で地殻熱流量が比較的低いとする従来の観測結果と整合的である。地磁気データからは、浅部における大規模な火山体の形成を示す証拠は認められないものの、小規模な貫入岩体や火山岩体など、局所的な磁化体が存在する可能性がある。

これらの観測結果は、沖縄トラフ南部の初期リフティングが、比較的低い熱的条件のもとで広域的な正断層活動が進行しており、大規模なマグマ活動の寄与を示す証拠は限定的であることを示唆している。ただし、八重山海底地溝では局所的なマグマ活動が生じている可能性がある。

本研究の成果は、背弧海盆における初期段階のリフティング過程の多様性を理解する上で、構造的および熱的な制約条件を提供するものである。