日本語要旨

パーシステントホモロジーを用いた東北日本・第四紀葛根田花崗岩中の微細空隙のトポロジカル解析

東北地方のような火山地域の深部には、400℃を超える超臨界流体を含む高温地熱貯留層の存在が期待されている。しかし、このような高温の延性領域における花崗岩内部の空隙の幾何学的構造や連結性については、ほとんど明らかにされていない。東北日本の葛根田地熱地帯は第四紀の葛根田花崗岩を熱源とし、過去に実施された深部掘削では、最深部で500˚C以上の温度に達する。この坑井は、浅部の熱水対流帯と深部の熱伝導帯の水理学的境界を深さ3,100 mで貫いている。

本研究では、この深部坑井WD-1aから採取された掘削コア試料を対象に、マイクロX線コンピュータ断層撮影を実施し、深度の異なる3つの花崗岩試料中の微細空隙をパーシステントホモロジーによって解析した。特に空隙の連結成分に着目する0次のパーシステントホモロジー(PH0)を用いて、空隙の幾何学的特徴および空隙間の間隔をbirth-deathペア {(bi, di)} として定量化するとともに、各試料の統計的特徴を主成分分析(PCA)によって評価した。

解析の結果、3種類の空隙が識別された。すなわち、(1)長石の置換反応に伴い反応フロントに形成される変質型空隙、(2)自形な結晶面によって囲まれた比較的大きなファセット型空隙、(3)粒界に沿って発達するクラックである。PH0とPCAの統合解析により、水理学的境界付近および深部熱伝導帯から採取された試料において、微細空隙の幾何学的特徴に顕著な違いがあることが明らかになった。

熱水対流帯の花崗閃緑岩試料では、細粒で互いに近接した変質型空隙が卓越する。水理学的境界付近の試料では、変質型空隙とファセット型空隙の両方が認められるものの、連結空隙率は低い。一方、熱伝導帯に位置する深部試料では、大きなファセット型空隙が粒界クラックによって相互に連結され、広範な空隙ネットワークを形成していた。これらの空隙の幾何学的特徴の違いは、室内実験で測定された浸透率の違いとも整合的である。本研究の結果は、空隙の幾何学的特徴を定量的に評価しその成因と結びつけてキャラクタライズすることが、深部花崗岩体の地熱貯留層としてのポテンシャルを評価するうえで重要であることを示している。