日本語要旨

亜熱帯北西太平洋における中期更新世後期の化石サンゴ礁の成長史

中期〜後期更新世において、地球は10万年周期の氷期・間氷期サイクルに伴う千年スケールの急速な気候・海面変動を経験した。しかし、これらの変動の時期や振幅、さらにはサンゴ礁生態系への影響については未解明な点が多く残されている。日本の琉球諸島の島々には、第四紀に形成・隆起したサンゴ礁成石灰岩が広範に露出しており、北半球の高緯度域におけるサンゴ礁の成長過程や化石サンゴ群集の記録を解明する上で絶好のフィールドである。

本研究では、沖縄本島南部および周辺離島に露出する中期更新世後期の港川層に着目した。採石場で観察されるサンゴ石灰岩露頭を対象に、化石サンゴ群集の分類学的組成およびその時空変化を詳細に調査した。その結果、浅海(水深 5 m 未満)からやや深い環境(水深最大 30 m)に至るまで、それぞれ固有の生息環境を示す7つの化石サンゴ群集を特定した。

これらのサンゴ群集および堆積相は、露頭間の地域差(空間変化)とともに、相対的海面変動や波浪エネルギーの影響差を反映した垂直方向(時間変化)の変遷傾向を示している。以上の結果から、港川層は少なくとも4回の相対的海面変動サイクル(最小振幅 20〜30 m)に応答して形成されたと推定される。