アジア起源ダストの北太平洋への輸送(始新世後期以降):その発生域から堆積域まで
- Keywords:
- Asian dust, Dust provenance, Dust flux, Westerly jet, Taklimakan Desert, Gobi Desert, Chinese Loess Plateau, East Asian marginal seas, North Pacific, Iron fertilization
これまで、ダストのフラックスは発生域の乾燥度を反映し、粒径は輸送風の強さを反映すると言われてきた。しかし近年の研究では、発生域(放出域)周辺山地における構造運動や氷河活動によって珪質砕屑物が発生域へ供給されることの重要性が指摘されている。東アジア内陸部乾燥域は、北半球におけるダストの主要な発生源であり、ゴビ砂漠とタリム盆地がその二大発生源となっている。ゴビ砂漠由来のダストは、主に中緯度の移動性低気圧によって低高度(<5km)を東方へ運ばれるのに対し、タリム盆地由来のダストは、主に高高度(>5km)の偏西風ジェットによって運ばれ、北半球全域に拡散する。これら二つの主要な発生源は、石英の電子スピン共鳴(ESR)信号強度と結晶化度(CI)の組み合わせや、Nd・Sr同位体比といった供給源指標を用いることで識別可能である。したがって、各時代におけるダスト発生域分布とそれらの供給源特性を把握できれば、北太平洋における各発生源由来ダストのフラックスと粒径の時空間分布から、偏西風ジェットや移動性低気圧の経路、強さ、それらの経時変化を復元することが可能になる。本総説では、近距離域(東アジアの砂漠やレス堆積域)、中距離域(東アジア縁海)、遠距離域(北太平洋)の細粒堆積物中に保存されたダストのフラックス、粒径、起源に関するデータをまとめ、始新世後期以降のそれらの経時変化を、テクトニックな時間スケール(数百万年単位)および軌道要素変動スケール(1万〜10万年単位)での復元を試みる。さらに、近距離・中距離・遠距離の各領域における変化の相互関係を検討することにより、ダストの発生源から堆積域に至るプロセスの変遷に関する統一的な見解を提示し、その制御要因を探る。また、地球規模の生物地球化学的循環およびそれに伴う気候変動におけるダストの潜在的な重要性についても考察する。