日本語要旨

機械学習による日本の大気質予測の高精度化

大気汚染の予測は、健康影響の軽減や早期注意喚起に欠かせない社会基盤である。しかし、化学輸送モデルによるオゾンや PM2.5 の予測には、排出量、気象場、化学反応過程、空間解像度などに由来する系統的な誤差が残る。本研究では、日本の大気質予測システム VENUS の予測精度向上を目的として、深層ニューラルネットワークを用いた機械学習型の後処理(post-processing; PP)システムを開発した。PP は、過去のモデル予測値と地上観測値の対応関係を学習し、モデル出力を後段で補正する手法であり、化学データ同化に比べて計算コストが低いという利点をもつ。
本研究では、2013–2016 年の WRF/CMAQ モデル出力と地上観測データを用いて PP モデルを学習し、独立した 2017 年データで性能を評価した。その結果、オゾンについては、補正前に顕著だった過大評価バイアスが大幅に低減し、平均偏差は 16.5 ppbv から −0.6 ppbv へ、相関係数は 0.657 から 0.870 へ、RMSD は 20.7 ppbv から 8.1 ppbv へ改善した。PM2.5 についても、相関係数は 0.544 から 0.671 へ、RMSD は 9.0 µg/m³ から 6.5 µg/m³ へ改善した。一方、PM2.5では、学習に用いた期間よりも2017年の観測濃度が低かったため、過去の高い濃度水準をもとに学習したPPモデルが補正を強くかけすぎ、予測値を実際より高くする傾向がみられた。これは、濃度の長期的な変化に合わせて、PPモデルを定期的に更新する必要があることを示している。本研究は、機械学習に基づく PP が、既存の大気質予測システムを低コストで高度化する有効な手段となり得ることを示している。