TROPOMI観測をテストベッドとして用いたTANSO-3/GOSAT-GWエアロゾル・雲特性推定アルゴリズムの理論的基盤と2024年ASIA-AQキャンペーンにおける検証
- Keywords:
- GOSAT-GW, TANSO-3, Aerosol, Cloud, Remote sensing
全球の気候データ記録および衛星による微量気体観測の高度化には、エアロゾルおよび雲特性の高精度な推定が不可欠である。2025年6月29日に打ち上げられた温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)には、可視域(約450 nm)、酸素Aバンド(約760 nm)、および近赤外域(約1600 nm)における高分解能分光観測を目的としたTotal Anthropogenic and Natural emissions mapping SpectrOmeter-3(TANSO-3)が搭載されている。本研究では、GOSAT-GW/TANSO-3の運用開始に向けて、Tropospheric Monitoring Instrument(TROPOMI)のLevel 1Bデータを代替データとして用い、エアロゾルおよび雲特性を推定するアルゴリズムを開発した。本アルゴリズムでは、TANSO-3のバンド1を用いてエアロゾル光学的厚さ(AOD)および雲光学的厚さ(COD)を推定し、477 nm付近のO₂–O₂吸収を利用してエアロゾル層高度(ALH)および雲層高度(CLH)を推定する。ルックアップテーブルは、線形化擬球面ベクトル離散座標放射伝達モデル(VLIDORT)により作成し、さらに相対湿度、温度依存性、およびO₂–O₂吸収帯における系統的オフセットを考慮した補正を適用した。
ASIA-AQ 2024キャンペーン期間中の検証の結果、AODはAERONET観測と良好な一致を示し、相関係数(R)は0.781、二乗平均平方根誤差(RMSE)は0.265であった。一方、Pandora SMART-sによる推定値との比較では、より中程度の一致が確認され、Rは0.444、RMSEは0.378であった。ALH推定値は、AODが0.5を超える条件においてHigh Spectral Resolution Lidar-2(HSRL-2)観測と±1 km以内で一致したが、エアロゾル負荷が小さい条件では高度感度が低下し、推定値が地表付近に収束する傾向が見られた。COD推定値はTROPOMIの標準プロダクトと整合的であった。一方、O₂–O₂吸収帯に基づくCLH推定値は、酸素Aバンドを用いた結果に比べて平均的に約1 km低く、これは両吸収帯の鉛直感度の違いに起因すると考えられる。今後、地表反射率処理、エアロゾル種分類、および雲相判別のさらなる改良を進めることで、本アルゴリズムはGOSAT-GW観測の有効活用に貢献し、大気環境研究および大気質応用に資することが期待される。