日本語要旨

四国海盆におけるメルト供給に乏しい海底拡大:海洋コアコンプレックスの広域分布と関連構造

フィリピン海に位置する中新世の背弧海盆である四国海盆には、メルト供給に乏しいリソスフェア伸長を反映する多数の海洋コアコンプレックスが存在する。2007年から2023年にかけて実施された海底地形・重力・地磁気調査、ドレッジ・潜水船調査に基づき、四国海盆南部において、マド、彗新、讃岐、阿波メガムリオンを含む複数の海洋コアコンプレックスを同定した。これらの海洋コアコンプレックスにはマントル物質・下部地殻物質が露出しており、高マントルブーゲー異常を伴うことから、地殻が薄いことを示している。
彗新メガムリオンから得られた地球化学および年代学的データは、古伊豆・小笠原弧のリフティング直後(約2400万年前)にその形成が起こったことを示唆する。斜長石かんらん岩が卓越し、斑れい岩の産出がごく限られる土佐メガムリオンは、メルト供給に乏しいリソスフェアの典型例であり、いわゆる「ヘス型」の海洋地殻を代表する可能性がある。土佐・讃岐・阿波メガムリオンを含む四国海盆西部の海洋コアコンプレックスの空間的・時間的分布は、海盆進化の過程で複数回の海嶺軸のジャンプが生じたことを示唆する。これらの結果は、四国海盆のかなりの部分が、典型的な大洋中央海嶺の環境とは対照的に、主としてメルト供給に乏しい過程によって形成されたことを示している。海洋コアコンプレックスは背弧リソスフェア進化を理解するための「テクトニックウィンドウ」を提供するとともに、海洋地殻構造の形成におけるメルト供給およびスラブ由来流体の役割を解明する今後の研究の枠組みを与える。