日本語要旨

亀裂性岩盤における異方透水特性の評価手法に関するレビュー

地下に存在する亀裂性岩盤の水理特性を評価することは、地盤工学的な応用や地質災害の軽減において極めて重要である。なかでも断層周辺では、亀裂の方向や密度が局所的に変化するためその水理特性が特に重要である。こうした点を含め、地下の透水性を適切に評価するためには、ボーリング孔を用いた原位置試験、岩石試料を用いた室内試験、および坑井物理検層データに基づく評価など、さまざまな手法が開発されてきた。
本論文では、亀裂性岩盤の透水性に関する既往研究について、ボーリング孔を用いた原位置透水試験、岩石試料を用いた室内透水試験、および坑井物理検層データに基づく水理特性評価、の三つのアプローチに分類してそれぞれの特徴を整理した。さらに、亀裂の形状に着目した透水性の解析的評価に関する研究についても紹介する。
また、掘削孔から得られた原位置透水試験結果と同一地点の試料を用いて異なる手法によって得られた透水係数を比較し、それらの相違点および評価上の課題について考察した。その結果、透水係数は評価手法によって大きく異なることが分かった。これは手法自体の特性に加えて、ここでの有効な評価スケールに影響を与えるメソスケールの亀裂の存在を反映しているためであると考えられる。
これらの結果は、断層帯における水理特性は強いスケール依存性を有し、対象とするスケールや目的に応じて適切な評価手法を選択する必要性があることを示唆している。また,技術的に可能な場合には、複数のアプローチを組み合わせることにより、さまざまな規模の亀裂を含む断層周辺の岩盤において、より信頼性の高い評価が可能となる。