日本語要旨

共生藻を持つ底生有孔虫の摂餌戦略とアミノ酸の窒素同位体比を基にした栄養段階の不一致

原生生物は様々な微細藻類や原核生物と共生関係にある。共生体の窒素代謝系は共生微生物の代謝の影響を受けており、極限環境で優位に生存するために役立つこともある。しかし、共生微生物各々が宿主の窒素代謝に及ぼす影響は未だ不明である。本研究では、アミノ酸の窒素同位体比(δ15N)を追跡することにより、共生体の生合成物質の起源や栄養相互作用を制約可能なことに着目し、有孔虫の殻内有機物とバルクから抽出したアミノ酸のδ15Nを測定し、それを基に算出した栄養段階と各有孔虫の摂餌戦略を比較した。アミノ酸のδ15Nから推定した栄養段階は種特有の摂餌戦略と整合的ではなかった。特に、従属栄養性のAmphisorus kudakajimensisでは、栄養段階の産出に使用したグルタミン酸、フェニルアラニンのδ15Nは低く、栄養段階は約1(独立栄養生物)であった。本種の従属栄養性に見合わない低い栄養段階は、宿主と共生藻の栄養源の共有及び栄養物質の相互の供給によって説明できるかもしれない。混合栄養または従属栄養性の栄養段階(1.5–2.3)を示したCalcarinidae科は珪藻を共生させており、限定的にしか摂餌を行わない。しかし、共生する珪藻を消化している様子が観察されており、これは、アミノ酸のδ15Nから推定した栄養段階と整合的である。褐虫藻や珪藻といった共生藻は異なる窒素代謝機能を持つため、この違いにより宿主の栄養戦略は影響を受けている可能性がある。単一種内におけるグルタミン酸、フェニルアラニンのδ15Nの大きな差異から、大型底生有孔虫は複数の窒素源を利用していることが示唆される。異なる窒素源を用いた飼育実験と組み合わせることにより、共生藻を持つ生物のより詳細な窒素代謝と個々の共生微生物の役割に対するさらなる洞察を得ることが期待される。