日本語要旨

波浪の駆動する海流:ストークス輸送の保存的効果がいかにして大規模海流を生むか

海洋波浪に伴うストークスドリフトは、風による吹送流に匹敵する質量の海水輸送を引き起こし、流れに変化を生じさせる。そうした波の効果は、渦度力やコリオリ・ストークス力を総称する「ストークス強制項」という形で、海洋モデルの中で間接的に表現される。研究では、ストークス強制項が大規模な流れに及ぼす影響の力学的理解を提示した。まず、線形化した支配方程式の解析を通して、ストークス輸送とそれに対する局所的な慣性応答流の和が表層海水の収束・発散を生み、実効的なエクマンパンピング(海洋内部に水を押し込む効果)を強制することを示した。海洋における主要な力学的強制である風応力に比べて、ストークス強制によるエクマンパンピングは長期平均的にゼロになるという特徴がある。エクマンパンピングによって渦位が供給される結果、水平に局所的な波浪場に対して過渡的な地衡流が生じる。特に海底に勾配がある場合、渦位アノマリは地形性ロスビー波として伝播し、波浪から地衡流への正味のエネルギー変換が生じる。この効果の大きさを調べるため、日本近海の現実的な地形のもと、波浪ハインドキャストで得られたストークス輸送のみによって強制して、海洋シミュレーションを実施した。同シミュレーションでは、低気圧が通過するイベントに伴い、ストークス輸送と同オーダーとなるO(1)m2/sの海水輸送が応答として生じ、イベント後も数日にわたって蛇行流が残り続けた。同波浪ハインドキャストと日本近海の高解像度大気再解析をもとに比較したところ、波浪による力学的強制は風によるそれと比べて1 – 12%程度であることが明らかになった。