アンチゴライトの結晶軸選択配向(CPO)の形成メカニズムとなる粒界すべり: アンチゴライトのBタイプCPOパターンの形成と発達
- Keywords:
- EBSD strain analysis, Antigorite-rich serpentinite, Deformation mechanism, CPO forming mechanism, Grain boundary sliding
アンチゴライトが結晶軸定向配列(crystal preferred orientation, CPO)を発達させることで、アンチゴライトに富む蛇紋岩には強い力学的異方性がもたらされる。その結果、これが広く分布すると考えられる沈み込み帯含水ウェッジマントルにおいても、力学的な異方性が強く発達する。異なる異方性と関連づけられるいくつかの種類のアンチゴライトCPOが知られているが、これらの異なるアンチゴライトCPOの形成を支配する要因については、いまだ十分には解明されていない。本研究で行ったアンチゴライト蛇紋岩中の剪断帯に対する電子線後方散乱回折(electron backscattered diffraction, EBSD)マッピングにより、次の複数の微細構造の変化が、歪みの増大に伴って進行することが明らかになった。i) 剪断帯に垂直な方向へのアンチゴライトのc軸の回転、ii) 剪断帯内でb軸が伸長方向に平行に配列するアンチゴライトCPOの発達、そしてiii) CPOの変化と整合的な、アンチゴライトの形状定向配列(shape-preferred orientation, SPO)の回転と強度の増大。剪断帯の内外で、歪みの違いに関わらず、同様の粒子のサイズと形状の分布が認められることは、剪断帯での微細構造の変化に対して、個々の結晶内部での塑性変形の寄与が、少なくとも主要なメカニズムとしては、きわめてわずかな程度であることを示している。粒子の配列・配向状態の変化は、細長い剛体粒子の受動回転に関する理論モデルと整合的である。これらの特徴から、変形を被り、アンチゴライトに富んだ天然の蛇紋岩でみられる、アンチゴライトのCPOは、粒界すべりによって補助された、細長い粒子の機械的回転によって、主に形成されたものと考えられる。この種類のアンチゴライトCPOを伴った含水ウェッジマントルは、沈み込み境界に沿った非地震性すべりを示唆する。