隕石母天体の熱水過程におけるアルドース生成への鉱物の影響
- Keywords:
- Meteorites, Asteroids, Sugars, Organic matter, Origins of life, Aqueous alteration
隕石には多様な前生物的有機化合物が含まれており,それらの起源を理解することは初期太陽系における前生物化学の解明に重要である。糖の生成過程としては,ホルムアルデヒドを出発とするホルモース反応が,隕石母天体における有力な反応機構として提案されてきたが,鉱物がこの反応に及ぼす影響についての研究は限られている。本研究では,水質変成期の隕石母天体環境を想定した熱水条件下において,かんらん石,アンチゴライト(Mgに富む蛇紋石),およびサポナイトの3種のケイ酸塩鉱物がアルドース糖生成に与える影響を検討した。実験の結果,これらの鉱物の存在下ではC4およびC5アルドースの生成量が増加し,鉱物がホルモース反応を促進することが示された。特にかんらん石およびアンチゴライトは高い促進効果を示した。一方,アンモニアを共存させた場合,初期段階ではアルドース生成が著しく促進されるものの,反応時間の経過とともにアルドース量は減少した。これは,アンモニア存在下でアルドースが他の有機化合物へと消費・変換されるためと考えられる。また,サポナイトの層間構造への糖の吸着により見かけの生成量が低下することが示唆された。これらの結果は,隕石母天体における鉱物—有機物相互作用が,前生物的糖類の生成や消費に重要な役割を果たした可能性を示している。