温帯河川水系における硫酸塩および硝酸塩の動態:マルチ同位体分析と一般化線形混合モデルを統合した予防保全的アプローチ
- Keywords:
- Earth and Environmental Sciences, Earth System Sciences, Environmental Sciences, Environmental Geography, Geochemistry, Limnology
河川水系における環境汚染は重大な懸念事項である。本研究は、深刻な環境汚染が報告されていない兵庫県の千種川流域を対象とし、土地利用および地質特性が流域スケールにおける硫酸塩(SO42−)および硝酸塩(NO3−)の動態に及ぼす影響を評価した。解析には、溶質濃度および多成分の同位体比(δ15N-NO3−, δ18O-NO3−, δ34S-SO42−, δ18O-SO42−)を応答変数として用いた一般化線形混合モデル(GLMMs)を採用した。
硫酸塩濃度は季節を問わず、集水域に占める開発地面積の割合が増加するにつれて増加する傾向を示した。同位体比(δ34S-SO42−, δ18O-SO42−)の分析とGLMMの結果から、硫酸塩は主に岩石の風化プロセスに由来して土壌から流出し、河川における空間分布は標高に伴う河川の合流過程によって説明された。硝酸塩濃度の分布は季節により異なり、夏季は集水域に占める開発地面積の割合が高いほど低濃度、冬季は高濃度となる傾向が見られた。δ15N対δ18Oのプロットを用いた解析では、降水および化学肥料の直接的な影響は限定的であったが、土壌へ施用された堆肥や汚水の局所的な流出が硝酸塩の分布に関与していることが示された。さらにGLMMの結果から、施肥地の面積割合がδ15N-NO3−の分布に影響を与える一方、硝酸塩濃度には寄与しないことが明らかとなった。これは、濃度の測定のみでは検出困難な潜在的な窒素負荷の存在を示唆している。本研究で提示したマルチ同位体分析とGLMMの統合的アプローチは、環境問題が顕在化していない地域において「プロアクティブ・インジケーター(先行的指標)」として機能し、潜在的な汚染源の特定や効果的な河川環境保全に資する重要な情報を提供することが期待される。