プロセスベースモデルとリモートセンシングによる湛水変動データを用いたユーラシア北部におけるメタン放出量の推定
- Keywords:
- Climate change, Methane (CH4), Northern high latitudes, Process-based model, Wetland dynamics
北方湿原は強力な温室効果ガスであるメタンの大きな放出域の1つであり、現在進行中の気候変動の影響を受けつつある。本研究は、ユーラシア北部におけるメタン放出量を、プロセスベースの陸域物質循環モデルと衛星観測による高分解能な湛水域データを用いて評価した。対象領域の湛水域における2003-2017年の平均メタン放出量は8.5 Tg CH4 yr–1であり、±0.7 Tg CH4 yr–1の年々変動があるという推定結果が得られた。本研究の結果は、地上でのフラックス観測に基づく推定と比較すると、地形や土地被覆による詳細な空間的不均質性をよく捉えていた。一方、西シベリア低地のような大きな湿原域においては、湛水域とメタン放出量を低く見積もる傾向があった。メタン放出の季節変化は明瞭であり、放出量がゼロ近くなる低温期と多量の放出が生じる高温期の季節振動が見られ、モデル推定で特徴がよく捉えられていた。年々変化は広域スケールの気象変動とよく対応していた(例えばEl Niño発生期であった2015年に放出量が増加)が、長期的な増減のトレンドは見られなかった。本研究は、衛星観測とプロセスベースモデルを用いることにより、現地観測が困難な遠隔地でのメタン放出量推定の可能性を示した。一方、観測による湛水域の検出とメタン放出に関する物質循環モデルの更なる改良の必要性も示された。