日本語要旨

化合物レベル同位体分析のための実用的な標準化および分析体系の最適化:21種アミノ酸および7種核酸塩基の安定同位体組成(δ13C, δ15N, δ34S)

化合物レベル同位体分析(compound-specific isotope analysis, CSIA)は、生態学、考古学、地球化学、物質科学および生化学を含む地球生命科学分野において、元素および分子の起源や生物地球化学的循環を詳細に解明するための重要な分析手法である。しかし、アミノ酸や核酸塩基を対象としたCSIAでは、実用的に利用可能な標準データや分析手順の体系化が十分に整備されていなかった。本研究では、高純度の試薬を用い、21種のアミノ酸および7種の核酸塩基について、化学誘導体化を行わずに高感度元素分析/同位体比質量分析法(nano-EA/IRMS)により炭素および窒素安定同位体比(δ13C, δ15N)を測定した。測定値は、国際標準物質に基づいて校正し、CSIAにおける実用標準として利用可能な同位体組成データを提示した。さらに、含硫アミノ酸であるシステインおよびメチオニンについては、硫黄安定同位体比(δ34S)を決定した。得られた同位体値は高い再現性を示し、ガスクロマトグラフィー/同位体比質量分析法(GC/IRMS)による独立測定との比較からも、分析手法間の整合性が確認された。加えて、本研究では試料前処理、化合物分離、同定・定量および同位体測定データ保証(確度・精度)を統合した分析体系を最適化し、炭素・窒素・硫黄を対象とした同位体体系を概念的に整理した。本成果は、CSIAの校正、手法開発およびデータ比較を支える実用的基盤を提供するとともに、将来的な化合物レベル放射性炭素分析への展開にも資する。