長崎原子爆弾によるキノコ雲の発達と放射性物質・粉塵の輸送に関する数値解析
- Keywords:
- Nuclear explosion, Mushroom cloud, Computational fluid dynamics, Blast wave, Radioactive materials, Dust transport, Passive scalars, Buoyancy
1945年の長崎原子爆弾投下後には、爆発によって生じた高温の火球が上昇し、特徴的なキノコ雲が形成された。このキノコ雲には、爆弾由来の放射性物質に加え、爆風によって地表から巻き上げられた粉塵や火災に伴う煙などが取り込まれ、その後の大気中での輸送や「黒い雨」の形成に大きく関与したと考えられる。本研究では、長崎原爆を対象として、爆風の形成からキノコ雲の発達までを一連の数値流体解析によって再現し、雲内部における放射性物質および粉塵の輸送特性を明らかにすることを目的とした。解析は、爆発直後の爆風を扱う一次元理論解析、爆風と火球の相互作用を高解像度で扱う三次元爆風解析、その結果を初期条件としてキノコ雲の上昇・発達を扱う大領域三次元解析の3段階で実施した。各段階の解析結果を次段階へ引き継ぐことで、爆発直後からキノコ雲形成までを連続的に再現した。解析の結果、地表で反射した衝撃波と火球との相互作用によって火球が大きく変形するとともに、キノコ雲の形成につながる強い上昇流が形成されることが示された。その後、火球は浮力によって上昇を続け、雲頂部の水平方向への広がりや特徴的な渦輪構造を伴うキノコ雲へと発達した。さらに、放射性物質と地表由来の粉塵では輸送過程に明瞭な違いが見られた。粉塵は主としてキノコ雲中心部に形成された上昇流によって地表付近から雲内部へ取り込まれたのに対し、爆弾由来の放射性物質は火球とともに上昇し、雲頂部周辺に形成された渦輪構造に取り込まれながら高高度へ輸送される傾向を示した。本研究により、爆発直後の衝撃波、火球、キノコ雲形成を連続的に解析することで、放射性物質および粉塵の三次元空間分布を推定できることを示した。これらの解析から得られた三次元空間分布は、その後の大気輸送や黒い雨の形成過程を解析するための初期条件として利用することができる。