日本語要旨

2020年4-5月の新型コロナウイルス感染症パンデミック期間における日本の都市〜遠隔域を網羅した大気中オゾン濃度の変化

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック期間中には、私たちの人間活動が著しく制限され、窒素酸化物(NOx)等の人為起源排出量は大幅に減少した。この前例のない規模の排出量減少が大気質に及ぼした影響は世界的に報告されているが、多くの先行研究ではその対象が都市部に偏っていた。二次大気汚染物質であるオゾン(O3)については、NOx排出量の減少によってNOタイトレーション(NO+O3→NO2+O2)が弱まるために、O3濃度が増加したことが報告されている。本研究では、東アジアスケールでのCOVID-19感染症対策に伴う排出量変化の時間的なずれを考慮し、2020年4-5月を対象に、日本の都市から遠隔域までを網羅し、かつ、異なる時間スケール(平均値と最大値)において、大気質モデルによってO3濃度の変化を評価した。同年には、前年比で4-5月にO3濃度の減少が観測され、特に5月はより大きな減少幅であったが、この傾向は大気質モデルでも良好に再現された。大気質モデルに基づいてこの要因を解析したところ、気象場(特に、日射量と相対湿度)の前年からの変化がO3濃度の減少の約50%(4月)、70~80%(5月)を説明できることがわかった。一方、国内排出量減少の影響は、気象場の影響よりも小さかった。この国内排出量減少は、都市域においては月平均O3濃度の増加、月最大O3濃度の減少に寄与し、遠隔域では時間スケールによらずにO3濃度の減少に寄与していたことが明らかとなった。東アジアにおいてはO3による大気汚染の悪化が懸念されているが、地点差・時間スケールに焦点を当てたO3濃度低減に向けた排出対策の必要性がCOVID-19の事例より示された。