定性的指標を用いた窒素状態評価の高度化 ― 日本・松島湾を事例として ―
- Keywords:
- δ15N-TDN, SUVA254, coastal ecosystems, Matsushima Bay, riverine influence
沿岸生態系における窒素動態の解明は、環境モニタリングおよび管理における重要な課題である。本研究では、半閉鎖性沿岸域である松島湾およびその周辺海域を対象として、溶存窒素の分布特性を解析した。その結果、全溶存窒素の窒素同位体比(δ15N-TDN)が、沿岸域における栄養塩の供給源および栄養状態を評価するための定性的指標として有用であることが示された。δ15N-TDN は松島湾湾口部と仙台湾との間でことなり、地理的に近接しているにもかかわらず、両海域が異なる栄養塩特性を有することが明らかとなった。さらに、溶存有機炭素(DOC)由来の指標である SUVA254(254 nmにおける吸光度)により、DOC 濃度そのものよりも陸起源有機物の影響を効果的に捉えることができた。これらの結果は、δ15N-TDN および SUVA254 が、特に処理排水の寄与が大きい沿岸域において,栄養塩の供給源および状態の差異を識別するための有効な定性的指標であることを示している。河川由来の陸起源窒素は河口付近では顕著であるものの,湾内で急速に減衰する一方で,下流側海域には同位体的および組成的なシグナルが残存することが明らかとなった。以上より,本研究は,定性的指標と定量的手法を統合した評価の重要性を示し,より効果的な栄養塩管理および沿岸環境管理戦略の構築に資する知見を提供する。