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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Human geosciences

湿度変化に伴う潮解・水和反応によって生じる塩類風化に関する室内実験

佐藤 昌人,八反地 剛

A laboratory experiment on salt weathering by humidity change: salt damage induced by deliquescence and hydration

Sato M, Hattanji T

Rock breakdown, Weight loss, Equotip hardness value, Longitudinal wave velocity, Sodium chloride, Sodium sulfate, Magnesium sulfate

塩化ナトリウムを含む試料に生じた湿度変化による塩類風化.(a) 鵜原砂岩,(b) 大谷凝灰岩 (c) 青島砂岩

水分の供給源が空気中の水蒸気に限られた環境で,室内塩類風化実験を実施した.風化実験には,大谷凝灰岩,青島砂岩,鵜原砂岩の3種類の岩石と,塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウムの3種類の塩類を使用した.風化実験に先立って,整形した岩石試料をいずれかの塩の20°C飽和溶液に72時間浸したのち,110°Cで48時間炉乾燥させて試料間隙内に塩を析出させた.次に,塩を含ませた試料を恒温恒湿庫内に設置したのち,庫内の湿度を6時間周期,20~98%RHの範囲で変化させ,湿度変化による塩類風化を発生させた.風化実験中,庫内の温度は20°Cに保ち,20サイクルごとに試料の重量,エコーチップ反発値,弾性波伝搬速度を測定した.

試料表面に析出した塩類は,100%RHに近い高湿度期に潮解,または水和した.一方,湿度が低い期間には,塩類の再結晶もしくは脱水反応が生じた.一部の試料では,風化による試料表面の破壊やエコーチップ反発値の低下がみられた.一方,試料の弾性波伝搬速度はほとんど変化せず,塩類風化は試料表面でのみ生じていたことが示された.

各試料の風化程度は高湿度期の吸湿量とよく対応しており,高い潮解性を示す塩化ナトリウムを含む試料が最も著しく風化した.引張強度が低く,間隙率が高い鵜原砂岩は100サイクル後に完全に破壊した.大谷凝灰岩や青島砂岩でも,塩類風化に伴う岩片の剥離,表面の膨張がみられた.塩化ナトリウムはおよそ80%RH以上の湿度で潮解する.多湿な沿岸部の環境では,海水由来の塩化ナトリウムが湿度変化に伴って潮解・再結晶することで,塩類風化が起こり得る.

硫酸マグネシウムを含む試料でも,岩片の剥離,試料表面に平行なクラックの発達がみられた.一方,硫酸ナトリウムを含む試料では,試料表面や間隙内に多量の塩が析出していたが,風化の兆候はほとんどみられなかった.硫酸マグネシウムに比べ,硫酸ナトリウムは岩石間隙内に析出しやすい.硫酸ナトリウムの結晶で試料間隙が塞がれたことで,空気中の水分が岩石内部へ浸透しにくくなり,塩類風化が起こりにくくなった.また,本研究のような短い周期での湿度変化では,水和反応速度が遅い硫酸ナトリウムは水和・脱水反応による塩類風化を引き起こしにくい.硫酸ナトリウムは最も塩類風化を引き起こしやすい塩の一つとされているが,日周期のような短い周期での湿度変化では塩類風化を引き起こしにくい可能性がある.

日本語原稿執筆者:佐藤 昌人(筑波大学大学院 生命環境科学研究科 地球環境科学専攻)
(敬称略)