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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Interdisciplinary research

下北半島沖海底下深度2.5kmまでの堆積物および石炭中に生息する微生物量を支配する岩石物理的環境因子

谷川 亘,多田井 修,諸野 祐樹,Hinrichs Kai-Uwe,稲垣 史生

Geophysical constraints on microbial biomass in subseafloor sediments and coal seams down to 2.5 km off Shimokita Peninsula, Japan

Tanikawa W, Tadai O, Morono Y, Hinrichs K-U, Inagaki F

Deep biosphere, Lignite coal, Limits of life, Microbial community, Pore size, Porosity, Permeability, Habitability

図1

下北八戸沖掘削サイト(Site C0020)における(a)微生物細胞数(b)透水係数(c)間隙径,の深度分布.

図2

下北八戸沖掘削サイト(SiteC0020)における微生物細胞数と(a)間隙率,および(b)透水係数の関係.

石炭堆積盆の地球物理的環境特性が海底下深部の微生物活動へ与える影響を理解するために,IODP第337次研究航海「下北八戸石炭層生命圏掘削」で採取されたコア試料を用いて,岩石の水理特性と微生物細胞数の関係を考察した.海底表層から深度2.5kmまでの水理特性の深度分布全体を眺めると,間隙率と透水係数は深部に向かって減少する傾向が認められた.一方,海底下深度1.2km以深では水理特性の深度分布は大きなばらつきが認められ,透水係数は10-16m2から10-22m2の範囲を示し,間隙径は0.01μm以下から100μmの範囲を示した.この大きなばらつきは堆積盆地深部の多様な岩相構成に起因しており、割れ目が発達する石炭は透水係数が一番高く,頁岩は一番低い透水係数と間隙径を示した.なお,透水係数と間隙径の関係はKozeny-Carmanの式で説明できた.海底下浅部においては,微生物細胞数の減少は間隙率と透水係数の減少と相関が高く,間隙径との相関は低かった.これは,おそらく埋没と力学的圧密に伴う堆積物の間隙率と透水係数の減少により微生物群への水や栄養の供給が低下したために,微生物細胞数が減少したものと推定できる.一方,海底下深部(1.2km以深)では,石炭・砂岩から構成される石炭挟在層近傍で微生物細胞数が大きく増加する特徴があり,同深度における透水係数と間隙径は周囲の岩相と比較して相対的に高い特徴を示した.これは,微生物が利用する石炭に含まれる栄養が,割れ目を通じて間隙径・透水性の高い砂岩層へ運搬されることにより,砂岩層で微生物生産が行われている(もしくは,栄養は運搬されず石炭の割れ目内で微生物生産が行われる)可能性を示唆している.一方,頁岩・シルト岩は透水性が非常に低く,微生物の大きさよりも小さい間隙径(0.2μm以下)を形成しており,微生物生産に必要な水とエネルギーの供給を妨げるため,微生物は頁岩・シルト岩層で生残できない可能性が高い.以上のことから,岩石の透水性と間隙径は海底下深部の微生物量および生産を支配する重要な物理的因子だと考えられる.

日本語原稿執筆者:谷川 亘(海洋研究開発機構 高知コア研究所 断層物性研究グループ)
(敬称略)