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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

雑微動の相互相関による三重県南東沖地震(MW5.9)に関連する南海トラフ周辺の地震波速度の時間変化

池田 逹紀、辻 健

Temporal change in seismic velocity associated with an offshore MW 5.9 Off-Mie earthquake in the Nankai subduction zone from ambient noise cross-correlation

Ikeda T, Tsuji T

Nankai trough, 2016 Off-Mie earthquake, Monitoring, Ambient noise, Seismic interferometry

(a) DONETの各ノードの平均地震波速度の時間変化。縦の破線は三重県南東沖地震の本震を含む時間ウインドウ(30日)を表す。(b) 2016年4月1日〜30日の相互相関をスタックしたデータから推定した地震波速度の時空間変化。四角と丸はDONETのノードおよび観測点の位置を表し、そのカラーは各ノードの平均速度変化および各観測点の速度変化を表す。観測点を結ぶ線のカラーは観測点間の速度変化を表す。黄色の星印は三重県南東沖地震の本震の位置を表し,赤の点は本震の3時間前から48時間後の間に発生した地震の位置を表す(Wallace et al. 2016)。速度変化の値は三重県南東沖地震前に対する相対的な変化を表す。

紀伊半島沖の南海トラフは、近い将来、プレート境界型の巨大地震が発生する可能性の高い場所である。本研究では、南海トラフにおける応力やひずみの時間変化を調べるために、2014年10月1日~2017年11月30日の期間に、紀伊半島沖の海底観測網(DONET)で取得された雑微動データの解析を行った。この解析期間には、DONET直下で2016年4月1日に発生した三重県南東沖地震(MW5.9)と、その余震が含まれている。雑微動データに対し、南海トラフ周辺で音響レーリー波が卓越していると考えられる0.7~2.0Hzの周波数帯のバンドパスフィルターを適用しながら、観測点間の相互相関を求めた。さらに相互相関にストレッチング法を適用することで、南海トラフ周辺の地震波速度の時空間変化を推定した。

その結果、三重県南東沖地震の際に、地震波速度の明瞭な低下が認められた。各観測点で推定された地震波速度の低下率は最大速度 (PGV)と相関があり、このことから強震動による動的な応力変化が、地震時の速度変化の主な要因であることが示唆される。地震波速度変化のPGVに対する感度は一様ではなく、各観測点周辺の地質構造や有効応力状態の違いを反映している可能性がある。また、三重県南東沖地震前に地震波速度が長期的に増加する傾向が得られ、これはプレートの沈み込みに伴う、南海トラフ周辺におけるひずみの蓄積を反映している可能性がある。この長期的な地震波速度増加のトレンドを取り除くと、地震時に低下した速度は観測期間内では完全に回復していないことがわかった。これは三重県南東沖地震による非線形性の影響を示している可能性がある。これらの結果は、雑微動の相互相関を利用した地震波速度モニタリングで、海域に発達するプレート境界域の応力変化をモニタリングできる可能性を示す。

日本語原稿執筆者:池田 逹紀(九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 CO2貯留研究部門)
(敬称略)