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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Biogeosciences

津波堆積物中の貝類群集に基づく後期完新世に石垣島に襲来した巨大津波の規模における地形の影響の評価

北村晃寿,伊藤真実,生田領野, 池田昌之

Using molluscan assemblages from paleotsunami deposits to evaluate the influence of topography on the magnitude of late Holocene mega-tsunamis on Ishigaki Island, Japan

Kitamura A, Ito M, Ikuta R, Ikeda M

1771 tsunami, ancient tsunami deposit, reef system, southern Ryukyu Islands, mollusc

(a)石垣島周辺のプレート境界.(b)トレンチの柱状図. (c)トレンチと現世海浜調査地点B6の空中写真.(d)砂質津波堆積物中の貝類群集と現在の海浜の貝類遺骸群(地点B6)の種組成と重量組成

1771年,先島諸島に巨大津波が襲来した.石垣島では,津波遡上高は30mに達し,先島諸島全体で約12,000人が亡くなった.この津波よりも前に大津波が襲来していたことが,津波石の分布と年代測定から判明していたが,津波石からは津波の遡上限界(規模)を推定できなかった.この状況を打開したのは,Ando et al. (2018,Tectonophysics, 722, 265-276)による石垣島の太平洋岸の丘陵斜面からの3層の砂質津波堆積物層と埋没津波石の発見である.彼らは,これらを上位から,T-I,T-II,T-III,T-IVと命名し,T-Iは1771年の津波,T-II,T-III,T-IVの堆積年代(津波発生年代)は,西暦1950年を基準として,920–620年前,1670–1250年前,2700–2280 から1670–1250 年前と推定した.さらに,砂質津波堆積物層I,II,IVの陸側末端高度は,9m, 6m, 8mであることを明らかにした.

東北地方太平洋沖地震による津波と津波堆積物の調査から,海岸の丘陵地帯における砂質津波堆積物の陸側末端高度は,遡上高の90%に達することが判明している.この関係を外挿し,さらに地殻変動を補正すると,調査地域の1771年津波の遡上高は約10mと見積もられ,古文書記録と一致する.しかし,同様の方法で,津波堆積物T-IIとIVを形成した津波T-II・T-IVの遡上高を推定するには,津波の規模を弱めるリーフクレスト(礁嶺)の有無を明らかにする必要がある.

そこで,本研究では,「砂質津波堆積物中の貝類群集」と「現在の海浜の貝類遺骸群」の種組成,重量・サイズを調査した.その結果,リーフクレストに庇護されたラグーンに生息する二枚貝Atactodeas striataが,現在の海浜ならびに3層の砂質津波堆積物のすべてから産出することが分かった.これは,現在と同様に,ラグーンが,1771年津波,津波T-II,津波T-IVの発生時にあったことを示唆する.

先行研究によって,砂質津波堆積物中の貝類群集の特徴として,「異なる生息環境の種の混合」あるいはまた「高い合弁率」が挙げられている.しかし,本研究対象のサンゴ礁のラグーンに面した丘陵地帯の砂質津波堆積物の場合,現在の同地域の海浜の貝類遺骸群と比較して,上記の2つに関する差はなかったが,大型で重い貝殻の産出頻度がより高いことが分かった.これは,同様の堆積環境での津波堆積物の認定基準の一つとなる.

日本語原稿執筆者 北村晃寿(静岡大学理学部地球科学科 防災総合センター)
(敬称略)