※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

>>日本地球惑星科学連合

>>参加50学協会へのリンク

  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Atmospheric and hydrospheric sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2016

都市化の進んだ西日本沿岸域における窒素の動態-下水道由来の負荷の影響-

齋藤 光代,小野寺 真一,金 广哲,清水 裕太,谷口 正伸

Nitrogen dynamics in a highly urbanized coastal area of western Japan: impact of sewage-derived loads

Saito M, Onodera S, Jin G, Shimizu Y, Taniguchi M

Nitrogen dynamics, Coastal area, Urbanization, Sewage, Sediment

都市化の進んだ沿岸域における下水道由来の窒素の動態に関する模式図.

実線および破線の矢印は研究結果から推定される水および窒素の輸送過程を示す.

都市化にともなう生活排水や工業排水由来の窒素負荷の増加は,沿岸海域の富栄養化や水質汚濁といった環境問題を招いてきた.例えば,大阪都市圏では1970年代にかけてこれらの問題が顕在化したが,それ以降は流域下水道の整備などによる改善が進んできた.一方で,窒素成分を除去するための高度処理設備の導入は依然として不十分であり,特に溶存無機態窒素(Dissolved inorganic nitrogen: DIN)については,高い割合で処理されずに河川や海域に流出している状況にある.しかしながら,沿岸域における下水道由来の窒素の影響範囲や沖合への輸送過程に関する実態はほとんど把握されていない.そこで本研究では,下水道由来の窒素の動態について明らかにすることを目的とし,大阪湾沿岸に位置する3箇所の下水処理場(此花,住之江,三宝)の処理排水放流点から沖合にかけての溶存・懸濁態窒素成分および窒素安定同位体比(δ15N)の空間分布および季節変化を確認した.

海水中の溶存窒素の大部分はDINの形態であり,処理排水放流点付近で最も高い濃度を示したが,海水による希釈と植物プランクトンによる取り込みの影響で沖合に向かって低下していることが確認された.これらの結果から,処理排水由来の窒素の影響範囲は放流点から1~2km沖合まで及んでおり,潮位変化や海水と処理排水との間の水温差の影響によって変動していると推定された.また,δ15Nなどの空間的・季節的な変化パターンに基づく考察から,潮位変化にともない海水の海底堆積物への侵入・流出が生じ,これによりアンモニア態窒素(NH4+-N)などの負荷が生じていることが明らかになった.以上の結果から,対象地域においては,処理場からの直接的な排水の流入だけでなく,海底堆積物が二次的な窒素の負荷源となっていることが示唆された.

日本語原稿執筆者:齋藤 光代(岡山大学 大学院環境生命科学研究科)
(敬称略)