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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Space and planetary sciences

201712201712

シンチレーション評価と予測に向けた赤道電離圏プラズマバブルの数値シミュレーション研究に関するレビュー

横山 竜宏

A review on the numerical simulation of equatorial plasma bubbles toward scintillation evaluation and forecasting

Yokoyama T

Equatorial ionosphere, Equatorial spread F, Equatorial plasma bubbles, Numerical simulation, Scintillation, High-performance computing, Space weather

赤道プラズマバブルの数値シミュレーション結果の一例

地球電離圏は、下層大気と宇宙空間を繋ぐ遷移領域であると同時に衛星電波が遅延等の影響を受ける伝搬経路でもある。GPS等を利用した高精度、高信頼度の航法、測位が実用化されつつあり、電離圏による電波遅延の影響は大きな誤差の要因となる。特に、局所的なプラズマ密度の不規則構造を伴う電離圏擾乱が発生した場合には、電波の振幅、位相の急激な変動(シンチレーション)が生じるため、GPS等による電子航法に深刻な障害を及ぼす。このような電離圏擾乱の発生機構を解明し、発生を事前に予測することが、科学・実用の両面から求められている。赤道電離圏で発生するプラズマバブルと呼ばれる現象は、深刻なシンチレーションを引き起こす原因として知られているが、その発生機構については未だ未解明な部分が多く、特に発生の予測は非常に難しい。プラズマバブルに伴う電離圏擾乱の空間スケールは、数千kmにわたる地球規模の変動から、1m以下の微細な変動にまでわたっている。GPSで利用されている周波数帯(約1.2-1.5GHz)では、300-400mスケールの不規則構造によるフレネル回折によって干渉し、地上において振幅と位相が激しく変動する。このような数百mスケールの構造は、電離圏内で直接形成されるわけではなく、それよりも大スケールの構造が、ある種のプラズマ不安定を起源としてまず形成され、そこから非線形過程を経て小スケールの構造に至ると考えられている。このような幅広いスケールにわたる現象を解明するためには、数値シミュレーションを用いた研究が必要不可欠である。近年の計算機性能の進歩により、数百kmスケールの大規模構造とシンチレーションを引き起こす数百mスケールの微細構造を、同一モデル内でコンシステントに再現できる可能性が高まってきた。本レビューでは、過去40年間の数値シミュレーションによるプラズマバブル研究の発展を概観し、シンチレーションの発生予測に向けたシミュレーション研究の最前線について紹介する。

日本語原稿執筆者:横山 竜宏(情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室)
(敬称略)