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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Biogeosciences

201611201611

250, 350°C, 500 barにおける二酸化炭素に富んだ海水とコマチアイトの反応:冥王代海底熱水システムでの水素生成

上田 修裕,渋谷 岳造,澤木 佑介,斎藤 誠史,高井 研,丸山 茂徳

Reactions between komatiite and CO2-rich seawater at 250 and 350°C, 500 bars: implications for hydrogen generation in the Hadean seafloor hydrothermal system

Ueda H, Shibuya T, Sawaki Y, Saitoh M, Takai K, Maruyama S

Komatiite, CO2-rich condition, Early Earth, hydrothermal alteration, Serpeninization

流体中の二酸化炭素濃度(a)と水素濃度(b)の経時変化

超塩基性岩の蛇紋岩化作用を伴う海底熱水系は生命の誕生と初期進化にとって重要な環境の一つであると考えられてきた。それは、原始生命がエネルギーを獲得する上で非常に重要な成分である水素に富む熱水を発生させるからである。地質記録からの推定では、生命の誕生や初期進化が起きたのは冥王代まで遡ると考えられている。また、冥王代では現在のかんらん岩の代わりにコマチアイトが超塩基性岩として広く海底に分布し、海水は現在より二酸化炭素に富み、酸性であったと考えられている。これまで、二酸化炭素を含まないコマチアイトの蛇紋岩化作用による水素発生は確認されているが、冥王代の環境により近い高二酸化炭素条件下で発生する熱水の性質については明らかにされていなかった。

そこで、本研究では冥王代のコマチアイトをホストとする熱水環境における熱水の性質を理解するために、250°Cと350°C、500気圧の高温高圧条件下でコマチアイトと二酸化炭素に富んだ酸性海水の岩石・海水反応実験を行った。その結果、定常状態における熱水中の水素濃度は350°Cで2.9 mmol/kg、250°Cでは約0.024 mmol/kgであり、二酸化炭素を含まない系のもの(300°Cで約20 mmol/kg)に対して比較的低い濃度であった。また、固体生成物の分析によって、350°Cでは方解石(FeO含有量が<0.8 wt.%)、250°Cでは鉄に富むドロマイト(FeO含有量が3~9 wt.%)が形成されたことが明らかになった。炭酸塩鉱物中の鉄の含有量と熱水中水素濃度の関係から、コマチアイトの蛇紋岩化作用中に形成される炭酸塩鉱物が2価鉄を取り込むことによって、マグネタイトの形成と水素の生成が抑制されたと考えられる。高二酸化炭素条件下におけるコマチアイトの蛇紋岩化作用では、二酸化炭素を含まない系に比べ水素発生量が抑えられるものの、350°Cの熱水中水素濃度は水素を利用するメタン生成菌が一次生産者となる微生物生態系が存在する現代のかいれいフィールドなどの熱水中水素濃度に匹敵する。これは、冥王代において高温のコマチアイト熱水環境が生命の誕生と初期進化に重要な役割を果たしたとするモデルを支持している。一方で、高二酸化炭素条件下におけるコマチアイトの蛇紋岩化作用では温度が下がるにつれて炭酸塩鉱物が安定化し、マグネタイトの形成と水素発生が抑制されると予測される。したがって、250°C以下の低温のコマチアイト熱水系は水素に富んだ熱水を生成できなかったと考えられる。

日本語原稿執筆者:上田 修裕(東京工業大学 理学院地球惑星科学系)
(敬称略)