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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Interdisciplinary research

201506201506

鮮新世から現世までの黒潮と対馬海流の歴史:マルチプロキシーアプローチ

Gallagher S J,北村 晃寿,井龍 康文,板木 拓也,小泉 格,Hoiles P W

The Pliocene to Recent History of the Kuroshio and Tsushima Currents: a multi-proxy approach

Gallagher S J, Kitamura A, Iryu Y, Itaki T, Koizumi I, Hoiles P

Kuroshio Current, Tsushima Current, Pliocene, Pleistocene, Holocene, Paleoceanographic proxies, Biogeography, Microfossils, Macrofossils, Geochemistry

図1: 沖縄周辺海域における黒潮の流路ならびに琉球サンゴ礁の氷期と間氷期における北限の予測位置.

図2: (i)本州の日本海沿いに露出する鮮新統・第四系における対馬海流指標の浮遊性有孔虫Globigerina ruberの層位分布と同時代の酸素同位体変動曲線LR04カーブ.1.6~1.0 Maの赤丸は,Hoiles et al. (2012)が報告した大桑層の化石記録に基づくインド―太平洋暖水プールに生息する底生有孔虫が産出した間氷期を示す.0 Maと~3 Maの赤丸は,Gallagher et al. (2009)によるインド―太平洋暖水プールに生息する底生有孔虫の産出記録である.(ii)は1.7 Ma以降の間氷期の高海水準期の日本海南方海峡の状態を示す.(iii)は1.7 Ma以前の間氷期の高海水準期の日本海南方海峡の状態を示す.

黒潮は北太平洋亜熱帯循環に支配された大規模な西岸境界流であり,インド―太平洋暖水プールから温暖な亜熱帯海水を日本にもたらし,アジアの気候を支配する主因の一つである.対馬海流は,黒潮の分枝流で,日本海に温暖な海水をもたらす.本論では,これらの海流の地質学的時間スケールでの歴史を解明するために様々なプロキシーを使う.サンゴ礁,ベッドフォーム,堆積物の供給源や分級度などの堆積学的プロキシーは,過去の海流の強度や緯度を示す.サンゴ群集や貝類群集などのプロキシーは,過去の沿岸流の動態を示す.微化石群集(浮遊・底生有孔虫,珪藻,放散虫やコッコリス)や有機物・無機物の地球化学分析は,海成層に記録された過去の表層海水温や塩分の歴史を解明できる.熱帯の花粉,微化石の日本への運搬とインド―太平洋の無脊椎動物の日本への移動も過去の海流の動態を表す.これらのプロキシーの層位分布は,黒潮が約3 Maまでには,現在の緯度(北緯35度)に到達していたことを示す.この時期の日本周辺は現在よりも水温が1-2℃低かった.一方,この時期の南方海峡を越えた対馬海流は弱かったが,約2 Ma(詳しく言うと1.7 Ma,海洋酸素同位体ステージ59)までに南方海峡が地殻の伸張で形成された.そして,それ以降,間氷期ごとに対馬海流が日本海に流れ込むようになった.約1 Maの氷期―間氷期サイクルの強化は,北太平洋亜熱帯循環と黒潮を強化した.これは,琉球列島のサンゴの拡大のトリガーとなり,サンゴ礁は現在の緯度まで到達した.その後,サンゴ礁の北限は間氷期には北緯31度に達し,氷期には北緯25度に後退するという変動を繰り返した.浮遊性有孔虫のプロキシーデータは,最終氷期最盛期では,東台湾海峡が狭くなるため,北緯24度で,黒潮の流路が現在の流路から東にそれて太平洋に向かったことを示す.その後,黒潮の流れは,完新世の間に,現在の位置にもどる.しかし,海洋モデルと地球化学プロキシーは,黒潮の流路は氷期と間氷期を通じて同じだったことを示すが,氷期の流路については検討の余地がある.未来の気候変動に伴う海流の動態を予測する際には,過去に起きた類似の現象は重要な研究対象となるが,その目的に使うには北太平洋に関する研究は十分ではない.未来の地球温暖化への黒潮の応答のモデリングは,黒潮の速度が0.3 m/sまで増加し,黒潮続流が0.5度北に移動することを示す.

日本語原稿執筆者:北村 晃寿(静岡大学 大学院 理学研究科 地球科学専攻)
(敬称略)