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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201412201412

天然のモアソナイト(SiC)-高度に分化した超還元的流体から形成された低温鉱物

Schmidt M W, Gao C, Golubkova A, Rohrbach A, Connolly J A D

Natural moissanite (SiC) – a low temperature mineral formed from highly fractionated ultra-reducing COH-fluids

Schmidt M W, Gao C, Golubkova A, Rohrbach A, Connolly J A D

Moissanite, SiC, Ultra-reducing, Iron silicides and carbides, COH-fluid, Fluid-fractionation

(a)1500℃, 2 GPaおよび(b) 1700℃, 10 GPaの条件で行われた実験生成物

天然のモアソナイト(SiC)は、ダイヤモンドや珪化鉄(FeSi)と共存して様々な場所から報告されている。しかしながら、このモアソナイトの形成条件については、想像の域をでていない。SiCの重要な特徴は、それが非常に還元的な性質を持っていることである。この論文では、1300~1700℃で2~10 GPaの条件で実験的に、SiCをカンラン石や斜方輝石と共存させ、[C + 斜方輝石 = SiC + カンラン石 + O2(MOOC)] バッファの酸素分圧を決定し、さらにSiCと共存するマントルケイ酸塩のXMg値を決定した。その結果、SiCおよび鉄珪化物と共存するカンラン石および斜方輝石のXMg値は0.993~0.998と非常にマグネシウムに富んでいることが明らかになった。また、この結果から計算した本実験の酸素分圧は、2~10GPaにおいて、Fe~FeO(IW)バッファから5~6.5対数ユニットも低い値である。

以上の実験結果を用いて、金属鉄合金、炭化物、珪化物を含む還元条件でのマントルカンラン岩(ハルツバージャイト)の相関係を明らかにした。非常に還元的な特徴をもつSiCは、Fe2+を含むケイ酸塩とは共存できないことを示しており、それゆえにXMg値が約0.9の典型的なマントル鉱物とは平衡に共存しえない。Fe-Mgの拡散速度からこれらの元素の拡散距離を計算すると、1 mmのサイズのSiCは、カンラン石中の鉄成分と反応して、800℃では100万年以内に反応して鉄炭化物または金属鉄と斜方輝石になってしまう。それゆえに、SiCは平衡が粒径のスケールにしか成り立たない低温(700~800℃未満)において、形成されたものと結論することができる。最もありそうなSiCの形成メカニズムは、もともと有機物に富んだ変成作用を受けた堆積物由来のC-O-H流体の分別作用によるものと思われる。そのような流体は、石墨かダイヤモンドに飽和しており、H2O-C共存酸素分圧よりもやや還元的なものである。マントル中を流体が浸透すると、蛇紋石、ブルーサイト、含水A相などの含水鉱物を結晶化させて、H2Oが分離し固定され、流体から酸素が除かれ石墨やダイヤモンドが沈殿することになる。

少量の大きく分化したこの流体にはメタンや水素が濃集し、大きなスケールおける全岩との化学平衡なしに、粒界でSiCが形成されるものと考えられる。このメカニズムは、モアソナイトのδ13C値が-20から-37に及ぶ大きな負の炭素同位体異常をうまく説明することができ、この流体が変成された有機炭素に由来する還元的な流体であることと矛盾しない。

日本語原稿執筆者:大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科)
(敬称略)