※Progress in Earth and Planetary Science は，公益社団法人日本地球惑星科学連合（JpGU）が運営する英文電子ジャーナルで，JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています．
日本語Abstract
Paper with full data attached
Interdisciplinary research
ベトナム北中部沿岸部に分布する中部三畳系炭酸塩岩の岩相層序，生層序，化学層序
Thuy Thi Nhu Ha，高柳栄子，上野勝美，淺原良浩，山本鋼志，井龍康文
Litho-, bio-, and chemostratigraphy of the Middle Triassic carbonate succession in the North-Central Coast Region of Vietnam
Ha T T N, Takayanagi H, Ueno K, Asahara Y, Yamamoto K, Iryu Y
Chemostratigraphy, Foraminiferal biostratigraphy, Carbon isotope ratio, Carbonate, Middle Triassic, Hoang Mai Formation, Vietnam.
ルーマニア（a），ベトナム（b，本研究），中国南部（c, d, e）の中部三畳系（アニシアン階）の炭素同位体層序プロファイル
ベトナム北中部～ラオス北部には，中部三畳系炭酸塩岩が広く分布している．本研究では，ベトナム・ゲアン省に分布するHoang Mai層の炭酸塩岩を堆積学的・古生物学的・地球化学的に検討した．Hoang Mai層の炭酸塩岩は，岩相および化石相に基づき，下位より，次の6つのユニットに区分される．砂質石灰岩（ユニット1），微生物岩を挟在するpeloidal packstone（ユニット2），peloidal packstoneとoncoidal floatstone（ユニット3），peloidal～bioclastic packstone（ユニット4），生砕物や微生物岩を多量～少量含むpeloidal packstone（ユニット5），生砕物を多量～少量含むpeloidal packstone（ユニット6）．ユニット1は砂質石灰岩から構成され，同様の砂質石灰岩がユニット2にも挟在することより，Hoang Mai層の炭酸塩岩プラットフォームの形成初期には，陸源性砕屑物が供給されるような環境にあった．この上位では細粒な石灰岩（packstone）が卓越することより，堆積場は低エネルギー環境へと変化したと推定され，ユニット4～6から緑藻類（dasycladacean algae）が産することからラグーンで堆積したことが示唆される．
Hoang Mai層の炭酸塩岩からは底生有孔虫化石が多く産出し，年代指標種であるCitaella dinaricaおよびC. deformataを含む計24種が見出された．ユニット3～6よりC. dinaricaおよびC. deformataが産出したことから，ユニット3～6はPelsonian亜階，その下位のユニット1～2はBithynian亜階に対比される．よって，本研究で用いたコア試料の年代は，中期三畳紀アニシアン期であると考えられる．微量金属元素濃度に基づく続成判定および分析値そのものの評価に基づき，本研究で検討した炭酸塩岩は初生的な酸素同位体比（δ18O）およびストロンチウム同位体比（87Sr/86Sr）を保持していないと判断される．一方，ユニット1～5の炭素同位体比（δ13C値）は初生的な値を保持しており，南中国やルーマニアの中部三畳系（アニシアン階）より報告されている炭素同位体プロファイルと同様のトレンドを示す．ただし，ユニット5の最上部からユニット6のδ13C値は上位に向かって急減する傾向を示す．同区間では空洞充填堆積物が多くみられることから，この急減は天水続成作用に起因すると思われる．
日本語原稿執筆者：高柳栄子（東北大学大学院理学研究科地学専攻）
（敬称略）
