※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する学協会と協力して出版しています.
日本語Abstract
Review
Space and planetary sciences
中緯度SuperDARNレーダー網の成果のレビュー
西谷 望,Ruohoniemi JM, Lester M, Baker JBH, Koustov AV, Shepherd SG, Chisham G, 堀 智昭, Thomas EG, Makarevich RA, Marchaudon A, Ponomarenko P, Wild JA, Milan SE, Bristow WA, Devlin J, Miller E, Greenwald RA, Ogawa T, Kikuchi T
Review of the accomplishments of Mid-latitude Super Dual Auroral Radar Network (SuperDARN) HF Radars
Nishitani N, Ruohoniemi JM, Lester M, Baker JBH, Koustov AV, Shepherd SG, Chisham G, Hori T, Thomas EG, Makarevich RA, Marchaudon A, Ponomarenko P, Wild JA, Milan SE, Bristow WA, Devlin J, Miller E, Greenwald RA, Ogawa T, Kikuchi T
Mid-latitude SuperDARN, Ionosphere, Magnetosphere, Convection, Ionospheric irregularities, HF propagation analysis, Ion-neutral interactions, MHD waves
南北両半球におけるSuperDARNレーダーサイトの配置図。緑色が極冠域SuperDARNレーダーサイト、青色がオーロラ帯SuperDARNレーダーサイト、黒色が中緯度SuperDARNレーダーサイトである。黄色は経験モデルに基づくオーロラ発光域の位置。
SuperDARNレーダーの観測対象となる自然現象の模式図。
大型短波レーダーの広域観測網であるSuper Dual Auroral Radar Network (SuperDARN)は、短波帯の電波を用いて電離圏プラズマの対流速度やプラズマ密度変動の全地球的な分布を1-2分程度の高時間分解能で提供する観測網であり、電離圏・磁気圏・超高層大気のダイナミクスや宇宙天気の基本原理を理解するためには必要不可欠な存在である。1995年の本格的な運用開始以降の10年間においては、SuperDARNレーダーは高緯度にのみに設置されており、これに従い研究成果はオーロラ発光域を中心とする高緯度領域に限定されていた。一方、オーロラ帯より十分低緯度側、磁気緯度にして約50度より低緯度側にレーダーを設置すれば今まで観測できなかった領域をカバーできるようになり、新しい研究テーマの開拓につながる可能性が高いことが、早くから複数の研究グループにより指摘されていた。この指摘に基づき、2005年から順次北アメリカや日本を中心とする中緯度域にSuperDARNレーダーが設置され始め、現在では南北両半球合あわせて10数基の中緯度SuperDARNレーダーが継続的に観測を実施している。本レビュー論文においては、2017年1月に名古屋大学で開催した国際ワークショップにおける議論の結果に基づき、中緯度SuperDARNレーダーを活用した最近十数年の研究成果を次の5つの大テーマに分類してまとめている。1. 電離圏プラズマ対流。2. 電離圏プラズマ不規則構造。3. 短波帯電波の伝搬過程の解析。4. 電離圏プラズマ・超高層大気の相互作用。5. 磁気流体波動。加えて本論文では、今後の研究の方向についても議論を行っている。さらには、SuperDARNの基本的観測原理や中緯度SuperDARNレーダーの経緯を中心とする過去の歴史に関する記述もあり、SuperDARNグループ外の研究者やこれからデータを使用しようとする初心者にとって教科書的な存在になりうる論文である。
日本語原稿執筆者:西谷 望(名古屋大学宇宙地球環境研究所)
(敬称略)