※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する学協会と協力して出版しています.
日本語Abstract
Research
Space and planetary sciences
201504201504
赤道スプレッドF層擾乱の基本単位としての湧昇
Tsunoda R T
Upwelling: A unit of disturbance in equatorial spread F
Tsunoda R T
Equatorial spread F, F-region plasma structure, Equatorial ionosphere, Equatorial plasma bubbles, Deep convective activity in troposphere, Atmospheric gravity waves, Neutral-ion coupling, Swoopers, Transequatorial propagation, Interchange instability
夜間の赤道付近のF層のプラズマ構造は、しばしば赤道スプレッドF (equatorial spread F: ESF) と呼ばれ、時間的にも空間的にも不均質である。観測によればESFはF層底部において斑状に分布する。また、このときF層にはプラズマが気泡状に減少した赤道プラズマバブル(equatorial plasma bubbles: EPBs) が形成され、しかもそれらは群をなして出現する傾向がある。もう一つの観測的特徴に湧昇がある。これはF層底部における等密度線の局所的な上方への湾曲として記述されてきた。興味深いことに、ESF斑、EPB群、湧昇のそれぞれの東西幅は似ている。さらには、いずれも東西非対称性を示す。
本論文では、ESF斑はEPB群の底部に対応するものであり、そしてどちらも湧昇中で起きる一連の電気力学的過程の産物であることを示す。この過程は次の3つの段階を経る。すなわち、 (1) 日没後のF層上昇期の湧昇の強化、(2) 湧昇頂部からのEPBの放出の開始、(3) 湧昇内でのプラズマの構造化である。湧昇はESF班とEPB群の形成の原因となっており、これらは夜間の赤道電離圏で起きる一体の擾乱とみなすことができる。
日本語原稿執筆者:倉本 圭(北海道大学大学院理学院 / PEPS編集委員会 セクション編集長)
宮澤 淳次(北海道大学大学院理学院 博士課程2年)
(敬称略)