※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Methodology

Atmospheric and hydrospheric sciences

202208202208

自然起源CO2フラックス解明のための長期インバージョンに向けて: NISMON-CO2 v2021.1のテクニカルノート

丹羽 洋介, 石島 健太郎, 伊藤 昭彦, 飯田 洋介

Toward a long-term atmospheric CO2 inversion for elucidating natural carbon fluxes: technical notes of NISMON-CO2 v2021.1

Yosuke Niwa, Kentaro Ishijima, Akihiko Ito, Yosuke Iida

Inverse analysis, Carbon dioxide, Carbon cycle, Atmospheric transport model, Data assimilation

(a,b) 疑似観測実験における真値(a)と逆解析の解析値(b)のCO2フラックスの分布(2011年7月)。ここでは解析対象ではない化石燃料起源の排出は除いてある。(c) 陸域11領域における化石燃料起源以外のCO2フラックスの年々変動。薄い灰色と濃い灰色の実線はそれぞれ初期値と真値を表す。他の色の実線はCTL実験による逆解析の解析値で10回から300回までの反復計算で得られたものを示す。青の破線は、モデル誤差を考慮しない逆解析(NO_ERR実験)の解析値で300回の反復計算で得られたものを示す。

地球表面における二酸化炭素(CO2)フラックスの正確な推定値は、炭素循環メカニズムを理解し、信頼性のある地球温暖化予測を行う上で必要不可欠である。さらに、その推定値は人為起源CO2排出の削減に向けての有用な科学的情報となる。逆解析は、CO2フラックスの時空間変動を定量的に評価することができる優れた手法であるが、いまだ不確定性は大きく、さらなる技術的な向上が求められている。例えば、領域別、国別といった空間スケールでの評価においては、インベントリなどの他のデータと比較可能なレベルまで高解像度であることが望まれる。そこで本研究では、最新の逆解析システムであるNISMON-CO2に、新たなスキームとして、グリッド変換、観測重み付け、非等方初期誤差共分散を導入した。さらに、疑似観測データを用いた逆解析実験を実施し、これらのスキームのインパクトを調べるとともに、実際の不均一な観測を用いたNISMON-CO2による長期の逆解析について、その信頼性を評価した。実験の結果、観測重み付けや非等方初期誤差共分散によって精度向上が見られたほか、グリッド変換は、解像度の高い(1° × 1°)フラックス推定を行う上で利点があることが示された。さらに、各地域におけるCO2フラックスの季節変動や年々変動に対して、逆解析の推定値が信頼するに足るものである一方で、全球の陸域・海洋の収支分配の推定についてはバイアスが存在しうることも示された。これらの結果は、実観測データを用いた逆解析プロダクトNISMON-CO2 ver.2021.1の解釈にも役立つものである。

日本語原稿執筆者:丹羽 洋介(国立環境研究所)
(敬称略)