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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Space and planetary sciences

地球近傍の宇宙空間でおこる擾乱のシミュレーション:2.オーロラ・サブストーム

海老原祐輔

Simulation study of near-Earth space disturbances: 2. Auroral substorms

Yusuke Ebihara

Substorm, Aurora, Computer simulation, Magnetosphere, and Ionosphere.

オーロラ・サブストームの発達過程を示す模式図.惑星間空間磁場が南を向くと上部のバルブが開き、太陽起源のエネルギーが流入する。すると磁気圏の高緯度境界付近で「カスプ・マントルダイナモ(発電機)」が働き,電流を地球に向かって流し始める(沿磁力線電流)。その結果、地球では静かなオーロラ・アークが光る(電球1が点灯).約40-60分後,磁気圏でエネルギーが部分的に解放されると「地球近傍ダイナモ」が現れ,オーロラが突然明るく光り始める(電球2が点灯).さらに電離圏の都合によって電流が次々と流れ始め,明るいオーロラが西向きに広がっていく(電球3,4が順に点灯).

サブストームは地球近傍の宇宙空間で起こる突発現象である.オーロラが突然明るく光り出すオーロラ爆発や激しい地磁気の乱れを伴い,通常1~2時間続く.地球近傍の宇宙空間(磁気圏)では引き延ばされていた磁力線が急に縮み,高温のプラズマが地球近くに注入されるなどの大変動が同時に起こる.磁気圏・電離圏の状態は一変することから,磁気嵐や放射線帯変動を理解する上でもサブストームは極めて重要である.また,地磁気の乱れは地上の送電設備に誘導電流を流し,高温プラズマの注入は人工衛星の帯電をもたらすことが知られており,社会に対する影響も大きい.サブストームの究極的な原因は太陽から吹き出すプラズマの流れ(太陽風)や磁場であるが,サブストームが発達する過程の全容はよく分かっておらず,宇宙空間物理学上の大きな問題となっている.複雑なサブストーム現象を理解するための手段の一つとしてシミュレーションがある。特にREPPUと呼ばれる電磁流体シミュレーションはオーロラ爆発をはじめサブストームに伴って生じる多種多様な変動を良く再現できることが示されている.本論文ではREPPUの計算結果を詳しく解析することによって得られたオーロラ・サブストームの一連の発達過程と惑星間空間から地球に至るエネルギーの流れについてレビューする.

日本語原稿執筆者:海老原祐輔(京都大学 生存圏研究所)
(敬称略)