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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Interdisciplinary research

南海トラフの深海底堆積部中のヒ素の深度分布とヒ素化学種の転移

益田晴恵,吉西晴香,淵田茂司,土岐知弘,Even Emilie

Vertical profiles of arsenic and arsenic species transformations in deep-sea sediment, Nankai Trough, offshore Japan

MasudaH, Yoshinishi H, Fuchida S, Toki T, Even E

Nankai Trough, deep biosphere, organoarsenical, convergent margin

IODP Site C0002における深海底堆積物中の間隙水と絞った後の堆積物の総ヒ素濃度・間隙水中の塩濃度の深度分布と岩層

本研究は,高深度の深海底堆積物中のヒ素が微生物活動にともなって変化することを初めて示したものである。

ヒ素は有害微量元素として地殻や水圏にあまねく分布している。堆積岩中のヒ素は新生代堆積物中のヒ素の原因物質だといわれているが,堆積岩中で続成作用によるヒ素の化学形態の変化を追跡した研究はほとんどない。本研究では,ヒ素濃度と化学形態を現世の付加体である南海トラフの3カ所の掘削地点の堆積物の分析により明らかにした。ここでは,海底面下2200mの深度までの堆積物を得たC0002地点の分析結果に基づいた深海底堆積物中にヒ素が濃縮・固定されるメカニズムを,初期続生過程における生物地球化学反応との関係から考察した結果を紹介する。

間隙水と搾った後の堆積物中の総ヒ素濃度はそれぞれ0.9~380ppbと3~14ppmの範囲であった。堆積物中の濃度範囲は熊野灘周辺海域の表層堆積物の値と同じである。総ヒ素濃度は,メタンハイドレートがもっとも大量に分布している海底面下400m付近で最大濃度を示す。ユニットIとユニットIIの境界付近にも小さなピークがある。これらのことは,ヒ素が堆積時の濃度を保存しているばかりでなく,続成作用時の酸化還元反応に伴って二次的に濃縮している可能性を示す。

ユニットIでは,間隙水中の臭化物・リン酸・アンモニウムイオンなどの濃度との関係から,藻類などのヒ素を濃縮する生物の分解が起こっていると推定された。メタンハイドレートの分布するユニットIIでは,pHが間隙水中のヒ素濃度を規制している。また,この深度ではヒ酸が形成されている。同時に,モノメチルヒ酸やアルセノベタインが検出されることから,これらのヒ素の化学態変化には,堆積物中の微生物活動が関与している可能性が高い.これより高深度では間隙水中のヒ素濃度は低く,ヒ素は堆積物中に固定されて移動しなくなる。

日本語原稿執筆者:益田晴恵 (大阪市立大学大学院理学研究科生物地球系専攻)
(敬称略)