※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Biogeosciences

西オーストラリア,ノースポール地域の約35億年前炭質物の顕微赤外分光分析

伊規須 素子,上野 雄一郎,高井 研

FTIR microspectroscopy of carbonaceous matter in ~3.5 Ga seafloor hydrothermal deposits in the North Pole area, Western Australia

Igisu M, Ueno Y, Takai K

FTIR microspectroscopy, carbonaceous matter, Dresser Formation, Archean

各試料の2960cm-1/2925cm-1ピーク高さ比(R3/2): (A) 現生原核生物およびアルカン試薬,(B) シアノバクテリアの加熱生成物,(C) 先カンブリア時代の炭質物のR3/2

西オーストラリア,ピルバラ地塊,ノースポール地域のドレッサー累層(約35億年前)には最古の海底熱水活動が記録されている.この地域からは,原核生物様微化石,堆積有機物,流体包有物中のメタンの安定炭素同位体組成等、生命活動の痕跡が報告されてきた.原核生物様微化石は太古代の生命記録として,もっとも直接的な情報を与える.しかし,サイズが小さく構造が単純な微化石を正確に分類することは一般に困難である.一方、堆積有機物の化学分析は起源となる生物の推定に有益な情報を与えるが,抽出した有機物には後の時代の汚染の問題がある.これらの問題に対して,岩石薄片の局所分析が注目され,微小領域から得られた元素組成,同位体組成,官能基組成等に基づき微化石および炭質物の起源が議論されるようになった.顕微赤外分光法は20µm程度の空間分解能で官能基組成を明らかにすることが可能で,原生代有機質微化石のキャラクタリゼーションに用いられてきた.しかし太古代試料に適用した報告例はない.本研究ではドレッサー累層の熱水性岩脈中に産出する炭質物の顕微赤外分光分析を行った.ドレッサー累層の炭質物のほとんどは基質の石英と酷似したスペクトルを示すことから,炭質物は主にグラファイト様構造から成り,ごく少量の脂肪族炭化水素鎖を含むと考えられる.得られた脂肪族炭化水素の2925cm-1(CH2)と2960cm-1(CH3)のピーク高さ比(R3/2)は0.22から0.51の値をとった.先行研究によると,熱変質によって有機物のR3/2は殆ど変化しないか増加し得るが,後の熱変質でR3/2が低下することはほとんど例がない.したがって、特に低R3/2(<~0.4)の炭質物は脂肪族炭化水素鎖がバクテリア由来であることを示唆する.一方,炭質物はFTT合成等の非生物的反応によっても生成し得る.しかし, FTT合成によって生成された有機物が有するであろうR3/2は,本研究で得られた炭質物のR3/2と一致しない.したがって,本研究で得られた分光学的特徴と先行研究における同位体組成の特徴を統合すると,当時の海底熱水系においてバクテリアとアーキアの両者とも存在したことが示唆される.

日本語原稿執筆者:伊規須 素子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)
(敬称略)