※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

>>日本地球惑星科学連合

>>参加50学協会へのリンク

  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Biogeosciences

地球温暖化と海洋酸性化への海洋の石灰化生物の応答に関する展望 ―高二酸化炭素濃度下での「温暖地球」におけるサンゴと有孔虫の挙動―

川幡穂高,藤田和彦,井口 亮,井上麻夕里,岩崎晋弥,黒柳あずみ,前田歩,守屋和佳,真中卓也,高木悠花,豊福高志,吉村寿紘,鈴木淳

Perspective on the response of marine calcifiers to global warming and ocean acidification – Behavior of corals and foraminifera in a high CO2 world “hot house”

Kawahata H, Fujita K, Iguchi A, Inoue M, Iwasaki S, Kuroyamagi A, Maeda A, Manaka T, Moriya K, Takagi H , Toyofuku T, Yoshimura T, Suzuki A

Partial pressure of CO2, Global warming, Ocean acidification, Coral, Foraminifera, Bleaching, Calcite, Aragonite, Saturation state, Organic matter, Alkalinity, Carbon cycle

Fig. 1.海洋酸性化への呼応を調べるための底棲有孔虫を用いた精密飼育実験.
Fig. 2. 地球表層システムにおける海洋酸性化と中和機能の模式図.

大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は現在400 ppmを超え,IPCCのシナリオRCP 6.0(中程度)によると今世紀末には720-1000 ppmまで上昇し,「双子の悪魔」と呼ばれる「地球温暖化」(気温は約2.6℃上昇)と「海洋酸性化」(pHも約0.3下降)が進行し,石灰化生物に大きな脅威となると予想されている.低緯度に生息する造礁サンゴや有孔虫は光合成共生をしているものが多く,これは温暖で貧栄養の海洋を生きぬく生態系に適したものと考えられる.造礁サンゴを中心とした共生藻を有する石灰化生物では,高温と高光量の条件下での「白化」が世界的規模で重大問題となっている.CO2が海水に溶存すると,海水中のCO2の分圧 (pCO2) と溶存無機炭素は増加し,pHと炭酸塩鉱物の飽和度は減少するが,全アルカリ度は変化しない.海洋生物の石灰化速度は酸性化した海水では概して減少する.しかしながら,Calcarina gaudichaudii というサンゴ礁に生息する大型底生有孔虫では,通常と反対に高pCO2条件下で石灰化速度が増大した.このように,環境,種,生活史のステージにより異なった応答が観察されることがある.近年,カルシウムや酸素・炭素などの同位体比や生物体内のpHの可視化などの研究を通じて石灰化機構の解明が進んでいる.大気中CO2濃度は>1,000 ppmだった白亜紀でも大量の炭酸塩が沈積した.これは,陸域の風化により,全アルカリ度が増加し,炭酸塩の保存が改善されためである.但し,この中和反応のスピードは大変遅い.一方,暁新世・始新世境界(5500万年前)では,メタンハイドレートの崩壊,メタンの酸化によるCO2の供給により,現代のような深刻な海洋酸性化がもたらされ,底生有孔虫の半分が絶滅した.CO2は極域や高緯度域の冷たい海水では溶解しやすく,深海では圧力効果により炭酸塩はより溶けやすい.このため,海洋酸性化は深層においても深刻な影響が懸念される.将来の研究課題として,炭酸塩の安定性について過去の全アルカリ度の定量的な復元に関する研究や,地球温暖化や海洋酸性化への生物の応答に関し,分子生物学的な分野からのアプローチなどなどが挙げられる.

日本語原稿執筆者:川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所 海洋底科学部門)
(敬称略)