※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

>>日本地球惑星科学連合

>>参加50学協会へのリンク

  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

南海トラフにおける付加体の間欠的成長と地震発生帯の成立

木村 学,高下 裕章,辻 健

Punctuated growth of an accretionary prism and the onset of a seismogenic megathrust in the Nankai Trough

Kimura G, Koge H, Tsuji T

Nankai Trough, Accretionary prism, Seismogenic zone, Forearc basin, Subduction zone, Megathrust, Collision, Amurian Plate, Okhotsk Plate, Kumano Basin

紀伊半島から南海トラフに至る約6Maと現在の模式的断面.浮揚性を持つフィリピン海プレートは,~13Maまでの異常な火成活動をもたらした後,西南日本の地殻下に停滞し,約6Maに沈み込みを再開した(Kimuraほか, 2014).東南海地震の破壊領域は,中期中新世火成岩起源の密度が大きくて堅硬な上部プレートが規制している可能性がある(Kimuraほか, 2018).

南海トラフ域の掘削によって,南海トラフでは1)約6Maの南海トラフ沈み込みの開始,2) 約2Maの付加体成長の加速が起こったことが明らかとなった.成長した付加体が南海トラフの地震発生プレート境界上盤の成立を促したと言える.

著者らは以前,12 Ma以降,南海トラフでの沈み込みは停止し,現在に繋がる南海トラフの沈み込みは6 Ma前後から開始されたと論じた.本研究により,熊野前弧海盆形成が,約6Ma以降付加体を覆う斜面堆積物から変形と堆積を経て,本格的な前弧海盆へと成長したことが明らかとなり,6Ma沈み込み開始説が検証された.また本研究により,2Ma以降,日本アルプスから大量の堆積物が南海トラフと熊野海盆へと流れ込んだ結果,分岐断層域の急速な隆起によって,熊野海盆では沈積直後の堆積物は次々と北側へ傾き,その下にある斜面堆積物や付加体の上にオンラップ不整合を形成しながら埋積したことが明らかとなった.堆積中心が北へ移動したのである.さらに本研究では,現在のオンラップ不整合が,熊野海盆の北縁にあることを地震反射法によって示した.

この付加体形成のはじまりは,それより北側にある基盤岩の上に衝上断層によってのし上げる逆向きの運動ではじまったと推定される.その基盤岩は,紀伊半島陸上部に広く分布する中期中新世の熊野酸性岩類か,固結した古第三紀から前期中新世の付加体と推定される.南海トラフ付加体域での掘削の結果は,中新世以降も中断することなく連続してプレートの沈み込みがあったとする従来の見方を変え,現在の南海トラフの前弧域が約6Maという極めて新しい地質時代以降,特に2Ma以降に急激に成長したことを明らかにした.この約6Maという年代は,マリアナトラフや沖縄トラフの拡大開始,琉球海溝とフィリピン海溝の沈み込み開始と同期している.また約2Maという年代は,東北日本が東西圧縮によって隆起を開始し,日本アルプスも隆起を始める時期と一致する.アジア全域でのテクトニクスのフレームに変化が生まれた結果と推定される.

日本語原稿執筆者:木村 学(東京海洋大学 海洋資源環境学部)
(敬称略)