※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

南海トラフ熊野灘のマントル起源流体

Wiersberg T, Hammerschmidt S, 淵田茂司, Kopf A, Erzinger J

Mantle-derived fluids in the Nankai Trough Kumano forearc basin

Wiersberg T, Hammerschmidt S, Fuchida S, Kopf A, Erzinger J

Helium isotopes, Radon, Fluid Flow, Nankai Trough, Integrated Ocean Drilling Program

熊野灘付加体内部の流体移動モデル(Yamano et al., 1992およびMoore et al., 2015を参考に作成)。

熊野灘の付加体内部流体移動とその起源について調べるために,国際深海科学掘削計画(IODP)第338次および348次航海で採取したマッドガス中の希ガス組成および同位体分析を行った。試料は3つの掘削孔(C0002F・C0002N・C0002P)の異なる深度(950~3050m)で採取した。

C0002F孔(深度950~1850m)で採取した試料中のヘリウム同位体比(3He/4He)は0.44±0.24~3.26±0.28 Raであった。深度1400mおよび1800mの3He/4He比はそれぞれ1.33±0.34 Raおよび0.44±0.24 Raと低く,地殻内部で生成した放射性壊変起源の4Heが多く含まれていると考えられる。その一方で,深度950mでは3He/4He比は3.26±0.28 Raと高い値を示した。深度950m, 1100m, 1400m, 1800mではラジウムの放射壊変によって生成するラドン(Rn)濃度(Bq/m3)が急増していることから,これらの深度では流体移動の流束が大きいことを示している。

C0002F孔下部(深度1700m~1850m)から採取した試料とC0002N(深度2050~2200m)・C0002P(深度2349.5~3050m)から採取した試料(348次航海)の3He/4He比はC0002F孔の上部と比べて低くなり(1.74~2.46 Ra),Rn濃度のアノマリーも観察されなかった。これは付加体堆積物内部でHeを含む流体が拡散移動したことによるものだと考えられる。C0002F孔の深度950m, 1400m, 1800mではRn濃度と3He/4He比が上昇したが,これは衝上断層活動によって断層沿いに流体が間欠的に移動したことを示唆している。深度950mの3He/4He比は現世の沈みこむフィリピン海プレート内部の流体(~3.4 Ra)に近い値を示したが,同孔の深度1400~1800mでは地殻内に蓄積した放射性起源の4Heの影響を受けて低い値を示したと考えられる。

日本語原稿執筆者:淵田茂司(大阪市立大学,国立環境研究所)
(敬称略)