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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Atmospheric and hydrospheric sciences

全球非静力学大気モデルによる雲プロセスに関する気候感度の不確実性の低減

佐藤正樹,野田暁,清木達也,Chen Ying-Wen,小玉知央,山田洋平,久芳奈遠美,佐藤陽祐

Toward reduction of the uncertainties in climate sensitivity due to cloud processes using a global non-hydrostatic atmospheric model

Satoh M, Noda AT, Seiki T, Chen Y, Kodama C, Yamada Y, Kuba N, Sato Y

NICAM, cloud microphysics scheme, cloud changes, cloud feedback, global non-hydrostatic model, global warming

NICAMでシミュレートされた年間平均した雲量の全球分布と温暖化による変化. 雲量は,国際衛星雲気候計画(ISCCP)シミュレータによって計算された昼間の雲量[%]であり,上図から高,中,低層の雲量を表す. 左列(a)現在気候シミュレーション(1979-2003)の結果,中列(b)将来気候(2075-2099)と現在気候シミュレーションの差,右列(c)現在気候(黒)および将来気候(赤)シミュレーションの東西平均(ZM)および全球平均値(GM).

従来の気候モデルでは,雲の表現の不確定性により,気候感度の推定に大きな不確実性がある. 気候感度の不確実性の低減のために,高解像度の全球非静力学モデルを利用するアプローチが有望である. このようなモデルはメソスケールの対流システムを直接シミュレートすることによって雲の構造を再現することが可能で,その結果を人工衛星観測とよく対比できる. 本論文では,全球非静力学モデルを用いた雲プロセスに関する気候感度の不確実性を低減することを目的とした5年間の研究プロジェクトの成果をレビューする. このプロジェクトは,気候変動リスク情報創生プログラム(SOUSEI)のサブグループとして実施されたもので,気候変化に関連する雲プロセスを研究するために非静力学正二十面体格子大気モデル(NICAM)を利用した. NICAMは,従来の全球気候モデル(GCM)よりもはるかに高い分解能(約7 kmまたは14 kmメッシュ)で数値シミュレーションを実行し,気候予測の不確実性の要因である対流パラメタリゼーションを用いず,雲微物理スキームにより雲を精緻に表現することができる.

本研究プロジェクトには,以下の3つの研究目標が設定された:1)タイムスライスの手法によって得られたNICAMによる地球温暖化シミュレーションにおける雲の変化の解析,2)雲微物理スキームの改良・開発とそれに対する結果の感度の解析,3)地球温暖化による台風等の大気擾乱に伴う循環の変化の解析. この研究プロジェクトではまた,ダブルモーメントバルク法の雲微物理スキームをNICAMに実装し,人工衛星観測を用いてそれによるシミュレーション結果を評価するとともに,本スキームの特性をビン型雲微物理スキームと比較した. NICAMによる将来予測シミュレーションでは,他のGCMの結果とは異なり,一般に高い雲の雲量が増加することが示された. また、NICAMによる高解像度シミュレーションにより、雲の水平サイズ分布の変化や熱帯低気圧・温帯低気圧の構造の変化について議論することが可能になった. 本レビューの最後には,TOUGOUと呼ばれるSOUSEI後継プログラムにおけるNICAMを用いた地球温暖化研究の将来の展望についても解説する.

日本語原稿執筆者:佐藤 正樹(東京大学 大気海洋研究所)
(敬称略)