※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Solid earth sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2016

緊急地震速報:“強震が到達するまでの数秒間”が意味することは?

田島 文子、林田 拓己

Earthquake Early Warning: what does “seconds before a strong hit” mean?

Tajima F, Hayashida T.

Earthquake early warning, effective preparation for seismic safety at recipients’ sites, short-wavelength ground motion variation

(上図)

ビッグ・ネットの緊急地震速報のタイムラインと 強震動が警報の前に到達するグレイゾーン。縦軸は地震発生時刻からの経過時間、横軸は震央距離(D)。 グレイゾーンは、異なった観測点間隔(Δx = 10, 20, 30, 40 km)の観測網毎に示されている。例えば、間隔が20 kmの観測網の場合、グレイゾーンは震源から半径約17 kmの地域で、そこでは警報の前に強震が到達し、 ゾーンの外よりも強い揺れがより大きな被害をもたらす可能性がある。

(下図)

ビッグ・ネットの観測点分布の例:a.日本における観測点間隔は国中でほぼ20 kmかそれ以下である。このシステムでのグレイゾーンは、震源から約17 kmである。;b.米国・西海岸地方の観測点間隔は均質ではなく、ロスアンジェルス、サンフランシスコ、シアトルのような人口密度の高い都市部では約10 km、人口密度の低い地域ではそれよりもずっと大きい。

緊急地震速報(EEW)システムは、 地震波をリアルタイムで観測することにより地震の発生を検知し、震源位置・マグニチュード・発生時刻などのパラメータを瞬時に決め、破壊的な地震波エネルギーが予想される場合には、該当する地域に地震動が到達する前に警報を出すことを意図したシステムである。現在、広域をカバーするEEWシステムは数カ国で稼働しており、日本では、国中の地震活動を観測する世界最先端のシステムが2007年から稼働している。2011年にマグニチュード9の東北沖地震が発生した時は、広範囲にEEWを発信することができた。 この地震による死者・行方不明者の数は、今世紀に多くの死傷者を出した地震(Mw ≥ 6.6)の中では、地震の規模に比べかなり少ない。他の国々の多くは、死傷者が少なかったことの主な理由として、高度に整備された広域のEEWシステムが稼働したことによるとみなし、日本をモデルにしたEEWシステムを設置することを計画している。しかしながら、日本の地震災害や災害軽減のための環境作りの歴史は他国とはかなり異なっている。 加えて、広域の観測網(以降、ビッグ・ネットと呼ぶ)からのデータを使うEEWシステムには、いろいろ限界がある。 従って、日本モデルのシステムが他国で有効に機能するためには、多くの要素を考慮する必要がある。本論文では、EEW開発につながる研究がどのように発展し、 システムが現在どのように機能するかをレビューする。また、ビッグ・ネットの観測点間隔よりも短い波長で地震動が変化することも示す。しかしながらビッグ・ネットの観測点密度を上げてより細かいモデルを作ることに意味がある訳ではなく、どのような状況の地震動にも耐えうるように環境を整えることが、システムの活用になることを強調したい。緊急地震速報を受ける各サイトで備えを十分にすることは基本的に重要で、その重要さは観測点を増やし解析方法を多少改善しても変わらない。EEWに関わっている研究者やエンジニアは、システムがどのように機能し、災害軽減に役立てるにはどのような事前の備えが必要かの広報に努めることが望まれる。

日本語原稿執筆者:田島 文子
(カリフォルニア大学アーバイン校 物理・天文学科)
(敬称略)