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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Human geosciences

ヒ素の循環と汚染

益田 晴恵

Arsenic cycling in the Earth's crust and hydrosphere: interaction between naturally occurring arsenic and human activities

Masuda H

Arsenic contamination, geologic cycle, plate tectonics, reduction, oxidation

ヒ素の地球化学的循環過程

カッコ内の数値はそれぞれの地質体中のヒ素濃度。青字と紫字はヒ素の流出過程と固定過程となる地質現象を示す。

1970年代末に地下水中ヒ素による慢性中毒の以降ヒ素含有地下水の摂取による健康被害がインド・西ベンガル州で最初に報告された後、汚染地域と被害者は世界的に増大し続けている。ヒ素汚染地下水の原因は多くの場合自然由来であるが、人間の社会活動が汚染の拡大に関わっていると考えられる。本報告では、世界各地のヒ素汚染地域のケーススタディを整理し、地圏と水圏でのヒ素の挙動と汚染が発生するメカニズムについて概説した。

ヒ素は微量(~ppm程度)ではあるが地圏に広く分布する元素である。一方、ヒ素汚染は弧状火山帯、激しい隆起・浸食・堆積作用が起こる造山帯とそれらの周辺地域に集中する傾向がある。このことは、ヒ素がプレートテクトニクスと深く関連して移動すること、また、活動的なテクトニクス場でヒ素が水圏へ移動しやすい環境となることを示唆している(図)。ヒ素は親銅元素であるが、地圏では流体とともに移動しやすい。したがって、火成活動に伴うマグマ性流体や熱水、それらに起源を持つ硫化物鉱化体が一次的なヒ素原因物質となる。また、地下水ヒ素汚染は、低濃度であっても、水と反応しやすい状態でヒ素が分布することで発生する。細粒のヒ素含有鉱物を含む砕屑物や風成塵(特に火山灰)などが散在する新生代堆積物中に発達する地下水帯水層ではヒ素汚染地下水が広範囲に出現する。このような新生代堆積物層は、ヒマラヤ・チベットの周辺地域や風成層が発達する乾燥−半乾燥地域の平野部で特徴的に見られる。これらのヒ素汚染地下水の形成には、表層水の流路や地下水帯水層中で起こる化学的風化作用や生物化学的作用が深く関与している。

日本語原稿執筆者:益田 晴恵(大阪市立大学大学院理学研究科)
(敬称略)