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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Interdisciplinary research

IODP U1423地点における元素状炭素の変動に記録された過去400万年間の東アジアのバイオマス燃焼史

芦 松,入野 智久,五十嵐 八枝子

Biomass burning history in East Asia during the last 4 million years recorded in elemental carbon variability at IODP Site U1423

Lu S., Irino T., and Igarashi Y.

biomass burning, element carbon, IODP Expedition 346 Site U1423

IODP第346次航海U1423地点において復元された過去300万年間の元素状炭素の粒度および高温バイオマス燃焼代替指標の変動。

樹木や草が燃焼すると微粒炭やススといった炭化物粒子が生成され、それらは風や河川によって遠くまで運ばれて、河口・沿岸・外洋域で堆積物中に保存される。堆積物の中の炭化物はバイオマス燃焼や人間活動だけでなく気候変動の代替指標として広く用いられてきた。本研究では、東アジアの地域スケールのバイオマス燃焼史を検討するために、統合深海掘削計画(IDOP)第346次航海においてU1423地点から得られた新生代海洋堆積物に含まれる微粒炭とススの分析が行われた。微粒炭とススは、それぞれ粗粒(2 µm以上)および細粒(2 µm未満)の元素状炭素(EC)として定義され、有機炭素(OC)とともに定量された。粒度分画はピペット法を繰り返すことによって行い、ECとOCはサーマル・オプティカル・トランスミッタンス(TOT)法によって定量した。粗粒・細粒のEC・OCともに大きく変動しながらも、0–1.8 Maで高く、1.8–4.3 Maで低い傾向にある。このことは、バイオマス燃焼が1.8 Ma以降、頻繁になったかあるいは大規模になったことを示唆しており、陸上バイオマスの量と降水量がECの供給を制御していたと判断される。一方,細粒ECの時代変化パターンは、粗粒のものとは異なっていることから、細粒ECが粗粒ECとは別の遠方の供給源を持つと考えられる。高温燃焼により形成されたECは、陸上バイオマスが拡大したと思われる時期に多く、それは多くの場合間氷期に当たっていた。

日本語原稿執筆者:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)
(敬称略)