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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Atmospheric and hydrospheric sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2016

観測定点KEOにおける生物地球化学的・海洋物理学的・気象学的時系列観測により明らかとなった貧栄養海域の生物地球化学への低気圧性渦と台風の影響

本多牧生、笹井義一、Eko Siswanto、吉田聡、相木秀則、Meghan F. Cronin

Impact of cyclonic eddies and typhoons on biogeochemistry in the oligotrophic ocean based on biogeochemical/physical/meteorological time-series at station KEO

Honda M C, Sasai Y, Siswanto E, Kuwano-Yoshida A, Aiki H, Cronin M F

KEO, oligotrophic, carbon hot spot, sediment trap, cyclonic eddy, nutrient, typhoon, OceanSITES

定点KEOにおける、衛星で観測された海面高度偏差(SSHA)、セジメントトラップで観測された全粒子フラックス(TMF)およびKEO表層ブイで観測された水深550m以浅の水温鉛直分布(TMP)の時系列変化

2014年、米国大気海洋庁NOAAの表層ブイによる観測定点KEOに、時系列式セジメントトラップ係留系を設置した。2014年7月〜2016年7月の2年間に得られたデータから、西部北太平洋亜熱帯の貧栄養海域における海洋低次(基礎)生産を支える栄養塩の供給メカニズムについて考察した。観測期間中水深約5000mにおける生物起源物質フラックスは晩春にかけて増加した。NOAAの表層ブイで観測された浅層域の水温鉛直分布および衛星で観測されたクロロフィルa濃度時系列変化から、この増加は冬季鉛直混合による栄養塩供給による晩冬〜初春の表層付近の基礎生産力の増加に起因するものと思われる。一方、表面付近の栄養塩濃度が低い2014年10月および2014年12月後半〜2015年1月にも生物起源物質フラックスの増加が観測された。海面高度偏差や水深500m以浅の水温鉛直分布の時系列変化から、2014年7月後半〜8月前半および11月に観測定点KEO付近を低気圧性渦の通過が確認された。この低気圧性渦の通過が低温で栄養塩に富んだ中層水の亜表層(約100m)付近までの湧昇をもたらし、亜表層付近の基礎生産力を一時的に増加させ、その結果、秋季と冬季にも生物起源物質フラックスが増加したと推定される。この推定は簡単な三次元海洋物理―生物化学モデルによる数値シミュレーションにより支持される。

また、過去のKEO表層ブイデータの解析および数値シミュレーションの結果、観測定点KEO付近においては中規模低気圧性渦による栄養塩供給が新生産の大部分を支えていることが明らかとなった。一方、2年間の時系列式セジメントトラップ観測期間中、5個の台風がKEO付近を通過した。台風通過後は栄養塩躍層付近に近慣性内部波が発生していた。そのため近慣性内部波により発生する拡散混合が表層への栄養塩供給をもたらし、ひいては基礎生産力と生物起源物質フラックスの増加を招く可能性が考えられたが、数値シミュレーションの結果、拡散混合による栄養塩供給量は、秋季に観測された生物起源物質フラックスの増加を支持するにはあまりにも小さいものであった。

日本語原稿執筆者:本多牧生(海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター)
(敬称略)