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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Atmospheric and hydrospheric sciences

201803201803

海大陸観測年事前キャンペーン中のマッデン・ジュリアン振動通過によって劇的に発達したスマトラ西岸沖のバリアレイヤーの形成過程

茂木耕作,勝俣昌己,米山邦夫,安藤健太郎,長谷川拓也

Drastic thickening of the barrier layer off the western coast of Sumatra due to the Madden Julian Oscillation passage during the Pre-Years of the Maritime Continent campaign

Moteki Q, Katsumata M, Yoneyama K, Ando K, Hasegawa T

Barrier Layer, Madden Julian Oscillation, Air-sea interaction

研究船「みらい」における観測に基づく12月12日(MJO通過直前)から12月17日までの1日平均した水温(赤、下部の軸)と塩分(青、上部の軸)の模式的な鉛直プロファイルの変化。(a)12月12日の最初の強風イベント前(風速6 m/s, 淡水流入36 mm/day)、(b) 12月13日の最初の強風イベント中(風速9 m/s, 淡水流入5 mm/day)、(c) 12月14日の最初の強風イベント弱化中(風速6 m/s, 淡水流入10 mm/day)、(d) 12月15日の2度目の強風イベント中(風速9 m/s, 淡水流入74 mm/day)、(e) 12月16日の2度目の強風イベント弱化中(風速6 m/s, 淡水流入61 mm/day)、(f) 12月17日の2度目の強風イベント後(風速3 m/s, 淡水流入-1 mm/day)。実線は、等密度層、破線は、等温層の深度を示す。

2015年12月のマッデン・ジュリアン振動(MJO)通過によって劇的に発達したスマトラ西岸沖のバリアレイヤーの形成過程を調べた。MJO通過前において、深度20mより上層の塩分成層は極めて強く、研究船「みらい」の観測に基づくバリアレイヤーの厚さは、5-10mであった。12月13日から16日にかけてのMJOに伴う強い西風強制下において、等温層は、20mから100mまで劇的に深まった。その一方、混合層深度の増大は、等温層深度の増大から1日遅れで生じており、結果的にバリアレイヤーの厚さは、24時間で60mも劇的に増大した。塩分の鉛直傾度の評価によって、その劇的なバリアレイヤーの発達は、大気からのMJO強制に伴う海洋の鉛直混合と外洋から侵入していた沈降する沿岸ケルビン波によるものであることが示された。さらに、水温の鉛直傾度の評価によって、バリアレイヤー内における水温逆転がMJO強制に伴う表層の冷却と水温の鉛直傾度の鉛直移流によって形成されていたことがわかった。このバリアレイヤーの劇的な発達における最も重要な要因の一つは、大気からの外部強制と海洋内部の波動が同位相で生じていたことであると結論された。すなわち、沈降する海洋ケルビン波は、11月中旬から12月末まで継続的に水温躍層を押し下げ、鉛直伸長の効果によって水温躍層付近の塩分成層を緩和し続けていた。その条件下において、MJO強制が海洋表層の強い塩分成層と水温成層の鉛直混合を引き起こした。そうした2つの異なる過程が同時に生じることでバリアレイヤーの劇的な発達を可能にし、MJO到達の5日後には最大で85mに達するバリアレイヤーが形成された。

日本語原稿執筆者:茂木耕作(海洋研究開発機構 大気海洋相互作用研究分野)
(敬称略)