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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201802201802

沈み込み帯における地震性・非地震性遷移領域でのレオロジーと応力

Platt J, Xia H, Schmidt W L

Rheology and stress in subduction zones around the aseismic/seismic transition

Platt J, Xia H, Schmidt W L

Dynamically recrystallized grain-size, Dislocation creep, Pressure solution, Tremor, Slow slip

沈み込み帯における地震性・遷移・延性変形の各領域の位置関係と、それらにおける主要な変形機構。遷移領域は非地震性微動やスロースリップの発生域であり、沈み込むプレートの被覆層である堆積・火山岩起源の変成岩類が継続的に、上位のプレートの下部に付加される可能性が高い。この付加により沈み込み境界から離れた領域においても変形が起こり、主要な断層滑り面が構造的に下位に移行する。延性変形領域では、独立した滑り面は存在せず、プレートの相対的運動が二枚のプレートの間に挟まれたチャンネルにおける延性変形を引き起こす。遷移領域では、拡大図で示したような軸面劈開を呈する褶曲が形成される。このように様々なスケールの構造の形成が低周波地震・突発的微動・スロースリップイベントを説明できると考える。

沈み込みチャンネルは、一般に、変形と変成作用を被った玄武岩と砕屑・遠洋性堆積岩からなっており、少なくとも40 kmの深さまで到達し、その層厚は数kmに及ぶ。約350°C以上の温度、つまり25–35 km以上の深さで、沈み込み境界は非地震性挙動への変化を示すが、この「深部」でのプレート間の相対的運動は数キロの幅を持つ沈み込みチャンネルにおける延性変形で賄われている。同様なチャンネルにおいて変成作用を受けたワッケの微細組織から、主要な変形メカニズムは石英の溶解・沈殿クリープであると推測される。一方、同ワッケに挟まれた変チャート層の微細組織解析から、比較的低い応力(8–13 MPa)状態の下で転位クリープによる延性変形があったことが推定される。変チャートは変ワッケより若干強度が高い可能性が高いので、これらの応力推定は沈み込みチャンネル全体における応力の上限であろう。低温変成作用では、玄武岩類の主要な変形メカニズムは鉱物反応に促進された拡散クリープであり、無水の状態では変チャートより強度が若干高いであろう。剪断応力10 MPaおよび500°Cの条件下の転位クリープあるいは溶解・沈殿クリープの石英流動則を適応すると推定される歪み速度は約10–12 sec-1 であり、これは100 mm/yr というプレート収束速度の幅約1 kmの延性剪断帯で賄えると推定される。延性変形卓越領域から浅部に分布する地震性領域への変化域も数kmの幅を持つ剪断帯であるが、変形の特徴として溶解・沈殿クリープによる微細褶曲構造の発生や膨張を伴う微細亀裂の形成がある。この変形様式を継続的に維持するためには、深部で起きる脱水反応による大規模な流体供給が必要である。上記の変形メカニズムによって、岩石にmmスケールの石英と板状鉱物の濃集領域からなる明瞭に分化したテクトニックな面構造や数多くの石英脈が形成される。100–200 m幅の領域における微細な割れ目群の急激的な発生が周期的な流体圧変化に繋がり、間欠的低周波微動 ・スロースリップ(ETS)イベントとなる可能性がある。 転位クリープを伴う動的再結晶化した変チャートの微細組織から推定される剪断応力は約10 MPaである。

日本語原稿執筆者:ウォリス サイモン(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)
(敬称略)