※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Space and planetary sciences

201804201804

日没後の赤道電離圏F領域高度上昇 – それとも上昇流の成長か?

Tsunoda R T,齋藤 享,Nguyen T T

Post-sunset rise of equatorial F layer -- or upwelling growth?

Tsunoda R T, Saito S, Nguyen T T

Equatorial plasma bubbles, Equatorial spread F, Day-to-day variability, Post-sunset rise of equatorial F layer, Large-scale wave structure, Upwelling paradigm, Upwelling growth, Pre-reversal enhancement, Electric field, Equatorial ionosphere

EPBが発生しなかった2日(2006年3月20、22日、細線)、及び発生した1日(2006年3月27日、太線)の、磁気赤道付近で東西に約700km離れた2ヶ所(Bac Lieu(9.3ºN, 105.7ºE、緑線)、Chumphon(10.7ºN, 99.4ºE、赤線))において、イオノグラムから測定した電離圏仮想高度(2.5MHzにおけるh’F)の時間(UT)変化。灰色線はChumphonのh’Fを現地の地方時に対して示したもの。イオノグラムにおけるレンジタイプESF(RSF)の時間(UT)変化(強さ2段階)を同時に示す。なお2006年の太陽黒点数平均値は15.2であり、太陽活動は低かった。EPBが発生しなかった日には両地点でのh’F変動はほぼ同じであったが、EPB発生日には両地点でのh’F変動に大きな差があることがわかる。

赤道プラズマバブル(equatorial plasma bubble: EPB)発生過程には、大きく分けて2つの考え方がある。一つは、日没後の赤道電離圏F領域高度上昇(post-sunset rise: PSSR)がEPB(赤道スプレッドF(ESF)とも言われる)に直結すると考えるPSSR-to-ESFパラダイムである。もう一つは、局所的なプラズマ上昇流の中からEPBが発生すると考えるプラズマ上昇流パラダイム(“upwelling paradigm”)である。EPB発生の日々変動を説明するためには、プラズマ上昇流パラダイムの方が優っていることが知られている。

プラズマ上昇流パラダイムでは、EPBの発生は以下のステップで起こると考えられている。(1) 電離圏F領域下部に東西幅400km程度の局所的な上昇流が発生、(2) PSSR(訳者注:東西2000km程度の範囲で起こると考えられている)に伴うプラズマ交換不安定性(interchange instability)によって局所的上昇流がさらに発達、(3) PSSRの終わりごろに上昇流中からEPBが発生。EPB発生に至るこのような描像では、やはりPSSRが上昇流の成長の強さを決める主な駆動源であると考えられる。

この考え方は、太陽活動が高くPSSRが強い場合のEPB発生をよく説明するが、太陽活動が低くPSSRが弱い場合のEPB発生を説明することには困難がある。本研究では、太陽活動が低くPSSRが弱い場合において、局所的上昇流の強さが、強いPSSRのF領域高度上昇と同等レベルになり、局所的な上昇流自体がEPB発生を駆動できることを初めて示した。上昇流領域の外ではEPBが発生しないことを考えると、これまでの主流の考え方と異なり、EPB発生の主な駆動源はPSSRではなく局所的上昇流であるということになる。EPB発達過程のさらなる理解のためには、局所的上昇流を引き起こす物理過程、特にPSSRが弱い場合の上昇流発生過程を解明することが必須であり、介在する複雑な物理過程の理解を進めていく必要がある。

日本語原稿執筆者:齋藤 享(国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所)
(敬称略)