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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Atmospheric and hydrospheric sciences

201803201803

フィリピンにおける夏の雨季の季節進行パターンとそれらの20世紀後半以降の長期変動

赤坂 郁美,久保田 尚之,松本 淳,Cayanan E O,Guzman R G,Hilario F D

Seasonal march patterns of the summer rainy season in the Philippines and their long-term variability since the late twentieth century

Akasaka I, Kubota H, Matsumoto J, Cayanan E O, Guzman R G, Hilario F D

Summer rainy season, Seasonal march, Philippines, Long-term variability, El Niño–Southern Oscillation

夏の雨季の季節進行パターンの長期変動.(a)は1951~2012年における各クラスター(C1-C6)の出現年を,(b)は各年の1-3月(JFM)と10-12月(OND)のONI(Niño 3.4海域で平均した3か月平均の海面水温偏差)の値を示す.

本研究では,フィリピンにおける1951~2012年の降水の季節進行パターンと,その長期変動特性を調査した.まず,降水の季節進行において卓越するパターンを明らかにするために,30地点の半旬降水量データにEmpirical Orthogonal Function (EOF)解析を行った.結果として,第一EOFモード(EOF1)として,夏の雨季の季節進行に関するパターンを得た.そこで,そのパターンを分類するために,各年のEOF1の時係数に対してクラスター分析を行ったところ,6つのクラスターに分けることが出来た.それらの出現傾向を調べた結果,1990年代以降,3つのクラスターが頻繁に出現するようになっており,夏の雨季の季節進行パターンが長期的に変化していることが明らかとなった.その3つのクラスターには, (1) 乾季が不明瞭で,かつ降水のピーク時期が長引く,(2) 乾季が明瞭で,かつ雨季明けが早く,雨季の期間が短くなる,(3) 乾季が明瞭で,かつ雨季入り・雨季明け共に遅くなる,という特徴がそれぞれみられた.

次に,これらの3つのクラスターと,フィリピン周辺における850hPa面のジオポテンシャル高度場と風系との関係を解析した.その結果,乾季が明瞭である時には,フィリピン周辺のジオポテンシャル高度は顕著な正偏差を,乾季が不明瞭である時には顕著な負偏差を示すことが分かった.乾季の持続期間や様相は,とくに2-3月の亜熱帯高気圧の強さと位置に左右されていた.また,夏の雨季入りの遅速は,風の東西成分における西風の開始時期と,雨季明けの遅速は,風の南北成分における北風の開始時期と密接に関係していることが分かった.さらに,雨季における降水ピーク時の雨量や降水が増加する期間の違いには,西風成分の強さが直接影響していることも明らかとなった.

3つの異常な降水の季節進行パターンは,エルニーニョ・南方振動(ENSO)が発生している年に出現する傾向にあったため,降水の季節進行パターンの長期変動は,ENSOの変動による影響を受けていると思われる.

日本語原稿執筆者:赤坂郁美(専修大学 文学部 環境地理学科)
(敬称略)