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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Atmospheric and hydrospheric sciences

201804201804

地球の気候を支配する海大陸の海岸線

山中 大学,荻野 慎也,伍 培明,濱田 純一,森 修一,松本 淳,Syamsudin F

Maritime continent coastlines controlling Earth's climate

Yamanaka MD, Ogino SY, Wu PM, Hamada JI, Mori S, Matsumoto J, Syamsudin F

Indonesian maritime continent, Atmosphere–ocean–land interaction, Convective clouds, Multiple scales, Diurnal cycle, Sea−land breeze circulation

「海大陸」海岸線周辺の日周期降雨・潜熱解放による全地球的気候支配

モンスーンアジア水文気候研究計画(MAHASRI; 2006−16)期間に,インドネシア「海大陸」を対象としてレーダー網(HARIMAU; 2005−10)および気候研究機関の雛形(MCCOE; 2009−14)を構築する2つのプロジェクトを実施した.本稿では,これらのプロジェクトで得られた,世界最多雨域の「海大陸」に関する気候学的研究成果を総括する.「海大陸」の大気変動で基本となるものは,海陸間温度差を原因として海岸線に沿って生じる日周期変動である.すなわち昼頃までの晴天時に入射した太陽放射により午後に陸上が海上より高温となり,その結果(中緯度の晴天夜間赤外放射とは異なり),対流雲から降る夕立の‘打ち水’効果により陸が冷やされ,そのため日出前に相対的に高温となった海上で対流雲と朝雨が生じる.従って,中緯度とは異なり,「海大陸」の日周期変動は雨季の悪天日において,より顕著である.1日より長い周期,すなわち季節内,半年,1年あるいはそれ以上の周期の変動は,日周期変動の振幅の増減として現れる.例えば,ジャワやバリで低緯度にも拘らず南半球夏季に顕著な雨季があるのは,太陽高度が最高となる季節に,午前の晴れ間の日射加熱とそれが生む午後の海風水蒸気輸送が最も強くなるからである.またエルニーニョ期の「海大陸」では,平年に比べて海水温が低く,海上の対流雲と朝雨が普段より弱いことが効いて,少雨傾向となる.低気圧が殆ど生じない赤道周辺においては,日周期変動が殆ど唯一の組織的に雨を降らせるメカニズムであるため,年雨量は海岸線から離れると急激(100~300 kmで1/3程度)に減少し,領域全体では海岸線密度(水平分解能100 kmで測った海岸線の長さを陸地面積で割ったもの)が大きいほど多雨となる傾向をもつ.このため「海大陸」は,面積は地球全体の4%ほどに過ぎないが,雨量や潜熱加熱は全球平均の2倍ほどにも及ぶ.本来局地的な日周期変動は「海大陸」全域にわたり海陸間でほとんど同期して現れ,そのようにして一体化した「海大陸」の対流が,全地球的な気候に影響を与える.従って,「海大陸」域内の局地的対流活動を識別できる高分解能(<< 100 km; << 1 日)な観測とモデルが,域内の防災のみならず,全地球的な気候予測の改善にも必須なのである.

日本語原稿執筆者:山中 大学(海洋研究開発機構 大気海洋相互作用研究分野)
(敬称略)