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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Interdisciplinary research

三陸北部沿岸野田村における地質痕跡に基づく日本海溝沿いの古津波履歴

井上 大雅,後藤 和久,西村 裕一,渡部 真史,飯嶋 耕崇,菅原 大助

Paleo-tsunami history along the northern Japan Trench: Evidence from Noda Village, northern Sanriku coast, Japan.

Inoue T, Goto K, Nishimura Y, Watanabe M, Iijima Y, Sugawara D

Paleo-tsunami, Sanriku coast, Japan, Tsunami deposit identification, AD 869 Jogan tsunami, Storm wave, Numerical modeling

代表コア(NM-K)の写真・岩相・年代測定結果.

(A) 数値計算領域 赤線は測線を示す.境界条件 (B) Case 1C(波高20 m,周期20 s, 潮位0 m)と (C) Case 2C(波高20 m,周期20 s, 潮位 5 m)での計算結果.(D) 測線断面図とCase 2Cにおける最大水位プロット.

三陸地方では,歴史史料や観測記録により沿岸各地に巨大津波が高頻度で来襲したことが確認されている.2011年東北沖津波に代表されるような低頻度巨大津波の発生予測のためには,地質記録に基づく古津波情報が欠かせない.しかしながら,三陸沿岸域における古津波調査は研究例が乏しく,古津波の時空間分布は不明確であり,歴史・先史津波の規模や再来間隔,発生頻度の推定のためには,更なる地質学的データの収集が必要である.

本研究では,三陸北部の岩手県野田村において調査を行い,砂礫質イベント堆積物が複数層存在することを確認した.そして,各砂礫層の詳細な分析・対比に基づき,堆積学的特徴が海方向からの強い流水の影響を示唆するものであることを確認した.更に、堆積物の起源認定を目的として高潮・高波の数値計算を実施したところ,高潮・高波では堆積物の分布域を十分に説明できず,津波により運搬・堆積したものと解釈された.よって,高潮・高波の再現計算は,内陸広域に分布している,あるいは標高の高い地形条件下で堆積した堆積物の起源認定に有用だと考えられ,新たな津波堆積物認定法として活用が期待される.

今回見出された津波堆積物のうち最上位のものは,歴史史料や放射性年代測定,テフラ分析の結果から,西暦869年貞観地震津波のものと推定される.これは,これまでのところ貞観地震津波堆積物の北限分布域の一つを定めるものであり,従来の貞観津波波源モデルの再評価,精度向上に向けた重要な制約条件になる.

本研究結果は,野田村において約1100~2700年前の1600年間に,少なくとも4度の巨大津波が同地域に襲来したことを示唆する.これらの津波イベントの規模は,津波堆積物の分布域から,2011年東北沖津波や1896年明治三陸津波等の歴史津波に匹敵する可能性が考えられる.

日本語原稿執筆者:井上 大雅(東北大学大学院 理学研究科 地学専攻)
(敬称略)