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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Space and planetary sciences

201801201801

赤道スプレッドF生成に対する日没後の鉛直プラズマ・ドリフト速度の影響

Chao-Song Huang

Effects of the postsunset vertical plasma drift on the generation of equatorial spread F

Chao-Song Huang

Equatorial ionosphere, Equatorial spread F, Plasma bubbles, Rayleigh-Taylor instability, Vertical plasma drift, Prereversal enhancement

2008年5月から2013年6月までの間にC/NOFS衛星によって得られた鉛直プラズマ・ドリフト速度(PRE)の大きさとプラズマバブル発生確率の関係。異なる季節のものを示す。

“赤道スプレッドF(ESF)”とは、赤道電離圏において発生するプラズマ密度の擾乱であり、局所的にプラズマ密度が減少する”プラズマバブル”とよばれる現象に伴って発生する。プラズマバブルは、プラズマ不安定の一種であるレーリー・テーラー不安定の非線形発展によって生成される。日没時における上向きプラズマ・ドリフト速度の増大(PRE)は、電離圏F領域におけるプラズマを高高度に押し上げ、より不安定な状況を生み出すことから、プラズマバブルの発生を決定づける重要な要因となっている。ESFは電離圏を透過する電波を使用する衛星放送や通信、GPSをはじめとする全球測位衛星システムにも悪影響を及ぼすため、ESF発生を決定する要因について多くの研究がなされてきた。特に、ESF発生に対するPREの依存性を定量的に理解しようとする研究がなされ、ESF発生とPREとの関係について次の3つの考え方が示されてきた。(1) ESFが発生するためには、PREがあるしきい値に達する必要がある。PREがそのしきい値より大きい場合はESFが生成され、PREがしきい値よりも小さい場合には生成されない。(2) ESFの発生確率は、PREの大きさに応じてほぼ線形に増大する。(3) ESFの発生確率は、PREの大きさの関数として連続分布する。上記の(2)及び(3)の関係は、PREの大きさにより、ESFの発生確率を決定することが可能であることを意味している。本稿では、これらの関係をレビューし、これらの関係がどのように相互に関連しているかについて述べる。また、ESFの発生及び、その全球分布に対して、プラズマ不安定を起こすきっかけとなる“タネ”がどのような影響を及ぼすかについても述べる。

日本語原稿執筆者:大塚 雄一(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)
(敬称略)