※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する51学協会と協力して出版しています.
※Progress in Earth and Planetary Science は,独立行政法人日本学術振興会JSPSより科学研究費助成事業(科学研究費補助金)のサポートを受けています.
日本語Abstract
Research
Solid earth sciences
201711201711
24 GPa における MgSiO3–CaSiO3 系の融解相関係
野村 龍一,周 佑黙,入舩 徹男
Melting phase relations in the MgSiO3–CaSiO3 system at 24 GPa
Nomura R, Zhou Y, Irifune T
Bridgmanite, CaSiO3-rich perovskite, Melting phase relations, Multi-anvil experiments, High pressure and high temperature, Thermodynamics
地球の下部マントルはブリッジマナイト、フェロペリクレース、CaSiO3 に富むペロフスカイト相で構成されている。これらの鉱物を構成する成分間の融解相関係を知ることは、地球下部マントルの融解現象やマグマオーシャンの冷却分化過程を理解する鍵である。本研究ではマルチアンビル装置を利用し、24 GPa における MgSiO3–CaSiO3 系の融解相関係を決定した。ソリダス温度は 2600-2620 K、共融組成は 81-86 mol% の MgSiO3 を含む (Mg, Ca)SiO3 であった。ブリッジマナイトへの CaSiO3 成分の固溶限、カルシウムペロフスカイトへの MgSiO3 成分の固溶限はソリダス温度で最大となり、それぞれ 3-6 mol%、14-16 mol% であった。本研究で得られた相図は非対称正則溶液のモデルを利用し、熱力学データセットの中に統合された。本研究で対象にした MgSiO3–CaSiO3 系のような単純二成分系の高圧融解相関係データを蓄積し熱力学モデルの中に統合することによって、マグマオーシャンの冷却分化過程といった、刻一刻と結晶化圧力・温度・組成が変わるプロセスの解明に貢献することが期待される。
日本語原稿執筆者:野村 龍一(愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター)
(敬称略)